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講演:『子宮内膜症と鍼灸治療』 平成21年度青年部講習会

平成21年度の青年部講習会の第三部で、下記の内容の講演をさせて頂きました。




子宮内膜症の及ぼす不妊症、特に卵管の癒着や卵巣嚢種といった積極的に医療の必要がある中程度以上の子宮内膜症ではなく、主とする症状が強い月経痛や月経困難症くらいである『臨床的軽度子宮内膜症』と不妊についてお話ししました。

子宮内膜症の発症は月経の回数が多ければ多いほど、また規則正しければ正しいほど多く発症すると言われています。

初潮年齢の低年齢化と、初産年齢の高齢化、また少子化によって月経回数が多くなり、この結果、子宮内膜症の発症が近年多くなったと言われています。

子宮内膜症があると腹水中のマクロファージの異常活性を引き起こし、子宮内膜症のある部位では炎症を起こします。

またマクロファージは、射精されて卵管内に遡上してきた精子を攻撃したり、マクロファージが産生する化学物質は卵巣へ影響し、卵胞の発育を阻害したり、受精卵に対しても悪影響を及ぼすことが分かってきています。

子宮内膜症は、月経痛や月経困難症をもたらします。
多くの患者さんは、月経がはじまると痛みのため、痛み止めを服用されることでしょう。

この痛み止めの服用についても妊娠への悪影響があります。

月経痛はプロスタグランジンという体内の物質によって子宮が収縮して起こります。
このプロスタグランジンは卵胞を保護し、また精子を呼び寄せる働きのあるケモカインという物質の産生に影響があり、痛み止めのアスピリン製剤を服用すると、結果不妊に陥る可能性がある、と言うものです。
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鍼灸の月経痛に対する効果は非常に高く、また継続して治療を行うことで腹腔内の清浄化を行い、子宮内膜症による不妊症を改善します。

また子宮内膜症によって起こされる強い月経痛・月経困難症のために痛み止めを服用されているのでしたら、鍼灸治療を行って薬の服用がなくても快適でいられる体づくりを目指したいものです。
鍼灸治療ならばそれを目指すことが出来ます。



講演では後半は実技を行いました。

月経期ではスムーズな経血の排泄を目指す治療を、時期が重なりますが卵胞期では質の良い卵胞を作るような配穴を。
黄体期では子宮の血行を改善して良い子宮環境を目指す治療をお話ししました。

良く『一子相伝』とか『企業秘密』とか、人前で治療についてツボやらコツを伝えない有名な先生がおられます。

私は休日を潰してまで患者さんのために勉強しようと集まってくれた皆さんを仲間だと思っています。
だからこの日は何も隠さず、すべてお話ししたつもりです。