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不妊症・基礎体温と鍼灸

4月26日に開催された鍼灸師会の講習会で、『不妊症の基礎知識と鍼灸治療』と題して90分の時間を頂きお話しさせて頂きました。

現在10組に1組の割合で、なかなか児を授かりにくいご夫婦がいらっしゃるようです。
不妊にはさまざまな原因があるようですが、一つの原因には初婚時の奥様の年齢が高齢化してきている、そのための卵巣予備能の加齢的低下が挙げられると思います。

もちろん、不妊の原因は男性にもほぼ同じ割合で存在します。男性不妊を取り上げないとテーマとしては片手落ちとなりますが、まずは女性不妊の鍼灸治療としてお話しさせて頂きました。

<基礎体温と鍼灸>



正常な生殖機能が働いている女性は、基礎体温は低温層と高温層の2層性を表します。
画像が理想的な2層性を表しています。

これは、卵巣や子宮の機能がよく働き、またそういった臓器をコントロールしている脳からのホルモンがよく働いているからなのです。



脳の中心の方に間脳と呼ばれるところがあり、そこには会社組織で言えば本社のような、根本となる視床と呼ばれるところがあります。
その視床の一部で、視床下部と呼ばれるところからのホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が、同じく会社組織で言えば支社にあたる脳下垂体を刺激します。

間脳の視床下部から脳下垂体に向けて放出される性腺刺激ホルモン放出ホルモンは、卵胞期(低温期)では90分に1回、黄体期(高温期)では4時間に一回放出されると言うことです。

支社である脳下垂体は、その前葉と言われる部分から本社・視床下部からの命令であるホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を受けて、営業所にあたる卵巣にさらに命令を出します。

その命令も時期によっては卵胞を育てるホルモン(卵胞刺激ホルモン)を放出することだったり、排卵を起こさせるためのホルモン放出(黄体形成ホルモン)だったりします。

成熟した卵胞が出来れば、血中のエストロゲン(なかでもエストラジオール=E2)濃度がぐっと上がって、排卵を起こさせるように、脳下垂体から黄体形成ホルモン(LH)を一気に大量に放出させたり・・・ 各器官、ホルモンは独立しているように見えてそれぞれ働きが関係し合い、複雑な仕組みを作っています。

このような複雑な仕組みどこか一カ所でも歯車が狂うと、排卵の遅延や無排卵、また黄体機能不全と言った異常に繋がります。もちろん不妊の原因の一つにもなります。

卵巣や脳下垂体、間脳などに器質的な病気がない場合、鍼灸を数周期にわたって続けると、多くの場合は基礎体温が改善してきます。

これは何らかの原因で不調になっている間脳〜脳下垂体〜卵巣系のホルモンのサイクルが改善していくからだと私は考えています。

原因は、脳下垂体や間脳、卵巣などに器質的な病気がない場合、また甲状腺の働きが正常な場合は、多くの場合は不摂生な生活による冷えやストレスが原因ではないかと思います。

サーカディアン・システム(体内時計)が狂うような、夜更かしや朝寝坊、食事も摂ったり摂らなかったりでは、90分に1回や4時間に1回のホルモンの放出時間がずれたりするかもしれません。

またホルモンの通路は間脳〜脳下垂体を除けば全身の血管ですので、冷えの強い足腰などを血液が通れば、ホルモンの血中濃度にバラツキが出るかも知れません。

以上は私が常々考えている鍼灸の基礎体温に及ぼす効果の仮説です。成書に書かれている学会の定説ではありません。

このような内容で講習会で話させて頂きました。
ほかにお話しした内容も、おいおいと書いていきたいと思います。

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間脳・視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモンの90分・4時間に1回の放出については、下記書籍で書かれています。


不妊症 (専門のお医者さんが語るQ&A)
田辺清男 著
保健同人社 (1997/03)
ISBN:9784832706101
1575円

1997年に初刊となる古い本ですが、不妊症の基礎から体外受精に至るまで大変わかりやすく書かれています。
もちろんめまぐるしく進む医学の世界ですので、最新の書籍と読み比べしながら参考にされると良いでしょう。