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夏季学術講習会報告

さかのぼって、7月22日に開催された鍼灸師会の講習会の模様を書いてみます。

 第一部の講演は、第二次日本経穴委員会作業部会委員の浦山 久嗣先生によるご講演です。演題は「WHO標準化会議の概要と注目経穴」。


 経穴の位置や取穴方などの国際統一の動きは、実は大変古く、日本経穴委員会の発足は1965年。実に40年前だったそうです。

 2003年のフィリピン・マニラ会議をはじめに、北京、京都、大田(韓国・デジュン)、大阪、東京、ほか韓国2回、中国1回の非公式会議、TFT会議を行い、昨年10月31日から11月2日まで、つくば市・つくば国際会議場で標準化公式会議が開催されました。

 このときの参加国は、
・日本、中国、韓国、アメリカ、イギリス、オーストラリア、シンガポール、ベトナム、モンゴル。

 このときの参加団体は、
・アメリカ東洋医学協会(AAOM)、世界鍼灸学会連合会(WFAS)。

 世間一般的に『鍼灸の本場は中国』という観念が浸透していると感じますが、これまでの非公式、公式会議の開催地や回数を見ますと、実は日本の鍼灸医学は世界でもトップでイニシアティブを握っていることがわかると思います。

 浦山先生の講義では、こういった標準化会議の歴史の流れから、標準化作業での成果である取穴の骨度法の統一や、代表的な経穴の話題についてお話しいただきました。


 第二部は、日本鍼灸師会元学術部長で、筑波技術大学鍼灸学科非常勤講師の松本弘巳先生です。この先生を知らない人はモグリ、というくらい高名な先生です。

 陰の腹・陽の腹、といった東洋医学独特の診察法から、聴診・打診の実際の方法まで、実技を交えて詳細にお話しいただきました。

 西洋医学では、腹診から固有臓器の形状や位置、大きさ、腫脹などを診ますが、東洋医学の場合は、腹直筋の緊張状態や熱感・冷感なども考慮して診断の手がかりを探ります。

 鍼灸師の腹診というと陰陽虚実の東洋医学ばかりを意識しますが、“腹部大動脈に動脈瘤があった場合は・・・”などと東西医学に偏ることなくより実践臨床に即したお話をしていただきました。


写真提供:山内隆一先生(会津若松市・保健堂治療院