福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
3月3日の日曜日は、もちろん桃の節句。
奇しくもこの日、不妊症に関しての研修会が開催されました。
日本でも屈指の不妊症治療施設である郡山市の乾マタニティクリニックで、培養士業務に携わられている菊地瑛子先生が講師でいらっしゃいました。
鍼灸の方は、体質改善による妊孕性の向上、子宮血流の改善による、自然妊娠から体外受精の際の移植の成功率が上がる可能性など。
また証明はされていませんが、卵巣(血流の改善による)機能の改善・低反応卵巣の改善の可能性などについて、私がお話しさせていただきました。
(たぶん無理に良い方に鍼灸の効果をこじつけた内容だったと思う)
当院では栃木との県境と言うことで、県内外のさまざまな不妊治療施設に通われているかたがいらっしゃいます。
毎月、複数の施設で採卵や胚移植に臨まれる方がいらっしゃいますので、ほぼ毎月数人は上記の乾マタニティクリニックで治療される方もいらっしゃいます。
※平成24年度中に来院した女性不妊患者のうち、31歳以上の体外受精経験者が、当院で治療後24年内に一回目の体外受精=採卵+胚移植、または凍結胚移植を受けた成績)
(クリックで大きくなります)
当院での成績は画像で示した通りですが、ほかの多数の施設よりも乾マタニティクリニックでの妊娠率が非常に高いことを常々感じていました。
排卵誘発法と採卵技術、授精技術、培養技術、移植技術と、おそらくすべてが国内高水準で行われているのでしょうが、講演後の懇親会時などに思い切っていろいろお話しを伺ってみました。
卵子と精子は卵管で出会って受精し、培養されて分割しながら子宮に運ばれてその内膜で着床する。
あまり詳しく書くと菊地先生へご迷惑をおかけしてしまいますが、体外受精においては、培養液の開発・改良にたいへんなご苦労があるようです。
上記クリニックの高い成功率は、培養液の開発をも含め、さまざまな段階でのこうした不断の研究の成果によるものなのでしょう。
体内にあっては、眠っている卵原細胞は13周期を持って排卵しますが、特に最後の3周期あたりで顆粒膜細胞をいう、卵子の栄養供給に関する細胞が厚くなってきて卵子を取り巻きます。
つまりこの時期が卵子のなかに栄養を蓄えられるかどうかが決まります。
鍼灸は、特定の臓器の血行を改善できる可能性を持っています。
この時期に卵巣の血流が改善できると、(体内での)卵子の栄養状態を改善できると思います。
卵子が成長する、受精して分割を繰り返すためには、ミトコンドリアによる栄養の十分な供給が大切です。
ところが高齢になると、ミトコンドリアがもつ独自のDNAも減ってきて、十分なエネルギーを作れなくなるとか、十分なカルシウムを蓄えられなくなった小胞体のせいで、卵子の成長や分割に必要なカルシウムイオンによる激しい振動を起こせなくなることなどが卵子の老化の原因だそうです。
(ニュートン 2012年10月号 ニュートンプレス社)
京都大学の森崇英名誉教授は、『卵子が発育する間に卵子内に蓄積された栄養素・・・これを使って卵子のミトコンドリアが生み出すエネルギーは決定的なものだ・・』と語られておられます。
ほ乳類の卵子を研究している東北大の佐藤英明教授は、『加齢とともに卵胞に伸びる血管が細くなり、十分な栄養が卵子に行かなくなることも、卵子の老化する原因なのかも知れない』と言われています。