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不妊症の患者さんたち(7) 患者さんからのメール(その2)

(前回のつづき)

治療は週に一回行いました。
患者さんの仕事の都合で、毎週土曜日に熱心に通院されていました。
初回の治療の時から、他の不妊や婦人科疾患の患者さんに行っているように、この患者さんにも自宅でのお灸をしてもらうようにしました。

鍼灸治療を始め、また自宅でのお灸も始めたからと言って、すぐに好結果が出るわけもないのですが、この患者さんの場合はBBTで見る限り低温期(卵胞期)での推移が長く、なかなか高温期に移行しません。
(その間にも、チクチクした下腹部痛や、違和感などがあったそうですが、排卵や月経には至らなかった)

こんなことが2ヶ月くらい続き、D72(前回の月経開始日から72日目の性周期日)あたりから急に有意な体温の上昇が見られました。患者さんによるとその直前には排卵期にありがちなおりもの(頚管粘液と思われます)と、排卵痛らしき下腹部の痛みや違和感があったと言います。

このあと高温期に入りますが、D87で来潮となります。

ご懐妊に結びつかなかったわけですが、体温の上昇とおりものの状態から、まず間違いなく排卵はあったと思われ、患者さんも大変喜ばれていました。

その後、D16あたりで下腹部の痛み(チクチクとした排卵痛を思わせる痛み)があったりもしましたが、今度は体温の上昇もなく、以前の卵胞期のまま日数が経っていきます。

このような患者さんの場合、一度正常な月経が来ると、その次からはだいたい正常になってくるのがふつうですが、、どうしたことでしょうか? 正直だいぶ悩みました。この患者さんの場合右の卵巣付近に風船のような腫脹もあって、それが何らかの原因のようにも思えてきました。

その頃、
『一度病院で診て頂いた方がいいんでしょうかね?』と患者さんが遠慮がちに言いました。

まだ結婚して日が浅く決して不妊症と言えるような年数も経っていない方でしたが、もしや子供の産めない体では?と大変心配していたのだと、今でもその言葉が耳に残っています。

数ヶ月も治療していて、途中で医療機関に精査を求める、と言うのも、患者さんに対しては大変失礼な話しだと思います。

様々な検査の結果、(私が)器質的な病気を看過ごし漫然と治療していたかも知れないし、鍼灸治療単独で効果がある適応症だったとしても、これまでの数ヶ月自分が行っていた治療が果たして効果があったのか? そんな疑問も当然のごとく浮かんできます。

その患者さんは、そのあと少ししてから引っ越して白河から少し離れたところに転居されました。当院への通院はそれほどしにくい所でもなかったのですが、転居先でおそらくご自身の体の状態を詳しく調べる意味もあって、産婦人科の専門医に受診し、鍼灸治療よりもひとまずそちらの方で治療をされているのだろう、と思っていました。

ほかの不妊の患者さんの治療を行っているときなどは、どうしてもその患者さんのことが気になります。いまごろどうしているかな?などと案じていました。

そして2ヶ月近く過ぎたつい先日、その患者さんから一通のメールが送られてきました。

(つづく)