No.346の記事

突発性難聴の患者さん

夏くらいから来院されている突発性難聴の患者さん。
まだ若い女性で、本来なら笑顔がこぼれるばかりに魅力的な年齢のはずだが、表情がちょっと暗い。
当院には元気な方はいらっしゃらないので、当たり前か。

大変ストレスの多い仕事で、それが原因かどうかわからないが、ある日突然強烈な左耳鳴りにおそわれ、専門医の診察を受けると入院を勧められたそうだ。

結局、入院せずに通院して治療を受けるが、強烈な耳鳴りはなくなったものの、持続した耳鳴りを訴えて治療にいらした。

突発性難聴は完全治癒が大変難しい病気で、生命には別状はないが、非常に難病である。

ただいろいろ問診してみると、以前から鼻の具合が芳しくなく、時々詰まったりするという。
また耳鳴りも、詰まった・ふさがった感じを伴うということから、耳管閉塞もあるのではないかと疑った。

肩こりもひどいし、それをあまり意識していなかったりする。

初めて受ける鍼灸治療に不安を感じながらも、週に一回程度を気長に続けるように言うと、仕事の帰りに週に一回程度、まじめに通うようにしていた。

治療を続けると、ときどき耳鳴りを忘れる日が出てきた。また耳鳴りを感じることはあっても、ほとんど気にならないくらいになった、という。

ある土曜日、『友達も連れてきました』と言いながら、体が大きくがっしりした、無口だけど温かそうなオーラを帯びた同じくらいの年齢の、男性を連れてきた。
別にたいした悪いところはなさそうで、軽い腰痛があるくらい。

『友達を連れてきた・・・』とは白々しい(笑)
この日の彼女の脈状はとても潤いのある脈で、またお腹を触っても暖かみがある。

後日、彼女が単独で治療に来たとき、『あの方、友達じゃなくて彼氏でしょ?』と聴くと、恥ずかしそうに頷き、『11月に結婚するのです』と認めた。

その彼女も、状態はさらに良くなり治療は2〜3週に一回くらい。耳鳴りはあるようですが、あまり気にならなくなりました、と、このころはよく笑うようになった。

『新婚旅行でハワイに行くので、飛行機がちょっと心配』と、先週治療にいらしたが、今頃はすてきなご主人と常夏のハワイを楽しんでいるだろうな、と思う。

だいぶ冷え込んだ白河は、昨日初雪だった。