No.661の記事

授かること、について(4)

不妊症の治療のために来院される方は、いくつかのパターンがあります。

一定期間専門医での不妊治療を行い、効果も思わしくなく、体外受精をすすめられた。

数回体外受精を行ったが、妊娠できなかった。または、科学的流産を繰り返してしまう。

数ヶ月先の胚移植を目指して、体調を整えたい。

胚移植に先立って採卵しようとするが、卵胞が(複数個)育たない。

採卵して受精まではうまくいくが、その後の卵割がうまく進まない。

ざっと思いつくまま、最近はじめて来院された患者さんの来院の動機をあげてみました。

不妊症の治療の第一には、やはり患者さんは専門の産婦人科医院に受診されることでしょう。
鍼灸治療を思い立つ方の場合、どうしてもさまざまな治療を行ったが良い結果が出なかった患者さんが多いように感じます。

特別な診断の決め手となるような検査もわれわれ鍼灸師はできませんし、せいぜいが基礎体温表を読んだり、冷えや凝り、疲労の具合などを指標にして治療するしかない実に時代錯誤的な治療だともいえます。

しかし原因不明の不妊症が実に多い事実で、『体づくり』をすすめるアナログで時代錯誤な治療が良い結果を現すこともあります。

もう書いても良いころかと思って書きますが、7月は、体外受精で卵管に着床してしまい、子宮外妊娠として卵管を片側摘出した患者さんが自然妊娠しました。

普通の女性は卵管が片方でもあれば自然に妊娠することは難しいことではないのですが、不妊治療を長く、しかも体外受精を行っていた方となれば、片側の卵管摘出ではその後の自然妊娠はまず望めないでしょう。

強力に幸運が働き、そして鍼灸も少なからず効果があったのでしょう。

もう一例あって、不妊歴が当院初診時で11年、体外受精は杯盤胞移植が3回あって、排卵誘発を行わないと月経周期が60日以上にもなる方がいました。
周期が30日程度になるのに1年半かかり、その後1年は鍼灸を行いながらタイミングを取っていただいていました。
合計して鍼灸の治療期間は実に2年半で、不妊歴も13年となりましたが、自然妊娠されました(紹介状を渡して、某大学病院不妊治療専門外来で検査期間中のことでした)

この方については、実はオチがあって、検査期間中には当然ルーチンで行う子宮卵管造影も行い、実に妊娠した前の周期では子宮卵管造影を行っていました。結果は良好で問題はなかったとのことですが、結局は鍼灸が効いて(周期も正常になっていたわけですから)妊孕力(にんようりょく)が高まっていたところに、子宮卵管造影によって卵管の通りが良くなった結果ではないかと推測します。

ART(高度先進生殖医療)よりも鍼灸が効果がある、などと私は思ってもいませんが、基礎体温表を読みながら鍼灸を行うと、ほとんどの方が遅かれ早かれ(基礎体温表のグラフ像などが)改善していくことがほとんどです。

その後自然にタイミングを取っていただき、それでも妊娠されない場合は、やはり専門医の先生にお任せするしかないと考えます。
鍼灸で妊孕力を高める体づくりは出来ますが、魔法ではありませんから、絶対的な不妊にはやはりARTは必要なのです。