No.712の記事

体外受精(ICSI)反復不成功例での自然妊娠(1)



当院での不妊症の患者さんで、過去に数度体外受精の失敗があり、それでも体調を整えることによって半ば諦めていた子宝に恵まれた方が数人いらっしゃいました。

『珍しいこと』、『奇跡的なこと』と思われることも多く、症例として呈示することは考えていなかったのですが、ある条件で絞っていくと、過去に顕微授精による胚移植でさえ妊娠しなかった方が、その後自然妊娠されているケースがかなり多い事に気づきました。


究極の治療を受けてもなお妊娠しなかった、だから次に私が受けるのは高度な体外受精しかないのだ、と頭から思いこむことは間違っているのではないでしょうか?

当院が鍼灸による不妊治療を標榜したのは約5年前からです。
少しずつ不妊の患者さんが増え、数度体外受精を行っても妊娠できなかった、と言う患者さんが来院されるようになりました。

周知の通り、今現在広く行われている体外受精は、受精するために十分成熟させた卵胞を多く採ります。

そのため採卵の前に排卵しないように薬剤でコントロールしながら、違う薬剤で卵胞を同時に均一に成熟させていきます。

このような治療を続けることは、体に大変な負担がかかります。一度目の胚移植で妊娠し、出産まで至ればまず良いのでしょうが、2度、3度、それ以上も繰り返し、それでもなお妊娠できない方が大勢いらっしゃるのです。

カルテを整理していて、
・40歳未満の女性
・3回までの体外受精反復不成功(培精法・顕微授精とも)
・原因不明でステップアップ(卵管の異常などの絶対因子がないこと)
・鍼灸治療期間中は、専門医での一切の治療を中止
・治療は中断なく継続して6ヶ月以上通院された方(頻度は週1回程度)

この条件でフィルタをかけると、5年前に不妊治療をはじめてから来院された患者さんで、上記の条件を満たす患者さんの自然妊娠率は7名中7名で100%となりました。

今後、分母が増えればこの数字も当然変わるでしょう。

しかしたとえステップアップして体外受精まで治療が進んでも、患者さんには自然妊娠を諦めて欲しくないのです。

今回、患者さんのご快諾を頂きまして、当院2年半の通院によって自然妊娠された不妊歴13年6ヶ月(来院時:11年)の女性のケースを数度に分けて紹介させて頂きます。

患者さんを年単位で長く通院させることは、高度生殖医療を受けさせる最適な時期を逃す事もあります。

このような危険を配慮しながら鍼灸を行うも妊娠できないため、再度患者さんとご家族を説得し、大田原市のK医療福祉大学リプロダクションセンターへ紹介状を持たせて受診して頂き、ARTの準備のため検査期間中に自然妊娠されたケースです。

自然妊娠を諦めている方、長く、先の見えてこない治療に疲れを感じた方に読んで頂ければ幸いです。

(本編へつづく)