No.899の記事

体外受精のアシストとしての鍼灸(特に着床改善)

原発事故から早7ヶ月が過ぎました。

震災の直前に2名の方が胚移植をして、無事着床、と言うところであの忌まわしい大惨事が起きてしまいました。

ご両名とも、あの大変な時期を切り抜けられ、妊娠20週を迎えて当院の不妊治療は無事終了。

今月から、今度は安産に向けた治療に入りました。

体外受精の成功率を上げるため、鍼灸を行うという方が大変多くなってきています。

一つは、何度か採卵され、卵子の状態などが思わしくなかった方や、数度移植しても妊娠に至らなかった方などが、鍼灸をのぞまれるほとんどのケースのようです。

卵子の状態を改善するためには、半年以上に渡る治療が必要ですし、これはなかなか大変です。

京都の中村先生が卵子のエイジングに詳しく、生物科学レベルで実に様々なことを教えてくれます。いずれそのようなお話しをしたいと思いますが、今日は着床について書いてみたいと思います。

形態、分割速度とも申し分のないグレードの良い胚盤胞を数度移植しても妊娠できない、と言うような現象から着床していない、着床できない、という着床不全という概念が最近言われるようになりました。

着床とは、黄体因子、子宮内膜因子、胚因子がいずれもが譲れない因子となり、それぞれが時間的に複雑に関係し合っています。

ハッチングした胚は子宮内膜上皮に乗って接着が起こります。その際にトロフィニンとインテグリンという物質が接着剤の役割をすると言うことです。

インテグリンがよりよい働きをするためには、炎症反応などによって出現するケモカインの働きが必要とのことです。

鍼灸がケモカインの発現に関与している可能性は、以前の記事で書きましたが、おそらくそのような働きも一つの要因なのではないかと思います。

【ケモカインとプロスタグランディン】
http://www.sanpei89in.com/diary/diary.cgi?no=801


参考文献:産科と婦人科 『着床不全の改善を目指して』2003 No.10 診断と治療社