福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
昨年1月〜12月末までで当院にて鍼灸を行い、妊娠された方のうち自然妊娠された方だけを抽出し、年齢と治療期間をしらべてグラフにしてみました。
赤の●は続発性不妊(二人目不妊以降)を表しています。
若いほど通院期間は短い傾向が伺えますが、自然妊娠には難しい40歳近い方の妊娠例も多くあります。
もっともグラフでは妊娠した年齢ですので、治療開始時の年齢は治療期間を差し引く必要があります。
22年中に自然妊娠された方の総数は48名で、うち30名近くは産婦人科にて何らかの治療(卵胞のモニタリング、薬による排卵誘発、注射による=hCG+hMG療法など)を受けていながら鍼灸を行い、13名は産婦人科の治療を中断中(人工授精まで行った方8名、体外受精まで行った方2名)の方がいます。
患者さんとしては一番多い35歳以上の場合、2年くらいで妊娠されるケースが多いようです。
グラフで30ヶ月以上で妊娠例がないのは、このグラフが自然妊娠例を取り上げているからです(1昨年は3年4ヶ月で妊娠された方がいました)。30ヶ月以上の方は人工授精以上の治療を行って妊娠している例が多いため、このグラフには載せていません。
治療期間が長くなることが多いので、患者さんには産婦人科との共同治療をすすめています。
鶏レバーやほうれん草、イチゴ、アボガドなどに良く含まれている葉酸は、妊娠初期に欠かせない栄養素です。
妊娠してから摂取を心がけるのでは遅く、妊娠する前からの摂取が必要となります。
葉酸はDNA合成を助ける水溶性ビタミンであり、妊娠初期の胎児の発育を助けます。
不足すると二分脊椎など神経管閉鎖障害が起こりやすくなると言われています。
またビタミンB12と協調して造血作用強くするので、貧血にも予防効果があります。
貧血などは割合多くの妊婦さんが経験します。
妊娠する前から、ぜひ意識して葉酸を摂取されることをおすすめいたします。
前述しましたが、鶏レバーやほうれん草、イチゴ、アボガドなどに良く含まれていますが、過剰に摂取されても水溶性のため害はないようです。
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京都新聞の記事(クリックで大きくなります)
血行が改善するとか、冷えが良くなる、といった漠然としたお灸ですが、熱さを伝える神経の伝達物質の一つであるタキキニンが、卵胞の発育に関与するそうです。
またタキキニンは、『刺された痛み』『熱などの熱さ』について働くとのことですが、なんとなく鍼灸の物理的な刺激を示唆しているようにも思えます。
継続して(ハリによって)刺したり、(お灸によって)熱の刺激を与えるとタキキニンが増えるとか、卵巣にも存在するというタキキニンの受容器が活性化するとか、そういったことはまだまだ研究の途上でしょうし、そもそも刺す刺激や熱がそのまま鍼灸に結びつくわけでもありません。
昨年、不妊で来院されたかたがいらっしゃいまして希発月経もあって鍼灸治療を行い、自宅でも灸をしていただきました。
また専門医での診察もこれまで受けたこともなかったため、鍼灸治療を4ヶ月半行い、ほぼ周期的に来潮するようになってから栃木県の専門医の先生を紹介させていただきました。
紹介先の産婦人科医院様からは、『卵巣機能不全と思われ、検査加療いたします。鍼灸もそのまま継続してください。』と報告がありました。
(早期)卵巣機能不全には、自然閉経などのように卵巣内に卵胞がなくなってしまった早期卵胞喪失(PFD)と、卵胞はあってもホルモンの異常や卵巣内の受容体に異常があって卵胞の育たないGn-ROSがあります。
この患者さんの場合は4ヶ月半鍼灸と自宅灸を行って自然な周期で排卵が起きるようになったわけですが、特にお灸の熱刺激が卵巣内の受容体を働かせたのかも知れません。
この患者さんはその後、紹介先の先生からタイミング指導を受けながら鍼灸を行い、無事懐妊され今年7月に出産予定とのことです。
PCOSをはじめとする月経周期の異常で来院される患者さんで、クロミッドなどで卵巣が反応しなくなったようなケースは鍼灸をはじめると再び排卵誘発ができるようになる方が多くいます。
もしかしたらタキキニンなどが関与しているかもしれません。