不妊症

山形で講演してきました

『不妊治療のススメ』シリーズも、縁あって山形で講演させて頂きました。

昨年秋の青森・八戸バージョンより30分延長したデラックス版(笑)3時間30分で実技込みでした。
実際は講演後の質疑応答が白熱しまして、実質4時間の講演となりました。



不妊カップルが10組に1組から、最近は7組に1組くらいに増えてきたと言われていて、その患者増加の要因から不妊の起こる部位と鍼灸の適応のお話しをまずさせて頂きました。

タイミングからARTまで、どのステージにいる患者さんであっても、鍼灸は良い効果があります。

私が考えている、原因不明女性不妊における軽度子宮内膜症の関わり合いなども、独善的とことわりながらお話しさせて頂きました。
やはり講演時間がこのくらい長ければ、余裕を持って様々なお話しができます。

午前中は基礎知識のお話しをさせて頂き、昼食には『せっかく山形に来て頂いたのだから』と言うことで、山形駅近くで蕎麦の美味しい店へ案内して頂き、五十嵐秀夫会長はじめ、会員の先生方と旨い蕎麦を頂きました。



蕎麦の銘店は、『庄司屋』。実はこの日連れてきて頂いて3回目の蕎麦屋さんです。あぁシアワセ。。。

食事中、産科・婦人科関連で様々なお話しをするのですが、みなさんの学識は相当な高レベルのようです。



午後は実技を中心にお話しをすすめます。
『鍼灸周期治療』と講演のために名を付けた当院の治療は、BBTをみながら、月経期を含む卵胞期、排卵期、黄体期などの時期によって配穴を変える、と言うもの。

排卵誘発効果の見込める配穴や、排卵期がはっきり分からない患者での対応、卵質の改善が見込める治療法などについてお話ししました。

また子宮内膜症が疑われる徴候や、鍼灸治療での対応、PCOSなどの無月経患者でのデリケートな鍼灸での排卵誘発法などについてお話しさせて頂きました。

この講演の前日には旧知の友人でもある山形市の麗明堂鍼灸院(http://www.reimeido.jp/)の五十嵐院長と鏡先生から大変なご歓待を頂きました。

お二人とも不妊症や婦人科には相当な学識をお持ちで、不妊症や産科分野でそうとうご活躍されているようです。

山形駅から山形蔵王インターへ向かう道は立ち並ぶ山も綺麗で、晴天に新緑がまばゆいばかりでした。
天気も良く、人も良く、美味しいものをたくさんご馳走になり、たっぷり時間を取って頂いて講演させて頂けたことに感謝いたします。

講演:『子宮内膜症と鍼灸治療』 平成21年度青年部講習会

平成21年度の青年部講習会の第三部で、下記の内容の講演をさせて頂きました。




子宮内膜症の及ぼす不妊症、特に卵管の癒着や卵巣嚢種といった積極的に医療の必要がある中程度以上の子宮内膜症ではなく、主とする症状が強い月経痛や月経困難症くらいである『臨床的軽度子宮内膜症』と不妊についてお話ししました。

子宮内膜症の発症は月経の回数が多ければ多いほど、また規則正しければ正しいほど多く発症すると言われています。

初潮年齢の低年齢化と、初産年齢の高齢化、また少子化によって月経回数が多くなり、この結果、子宮内膜症の発症が近年多くなったと言われています。

子宮内膜症があると腹水中のマクロファージの異常活性を引き起こし、子宮内膜症のある部位では炎症を起こします。

またマクロファージは、射精されて卵管内に遡上してきた精子を攻撃したり、マクロファージが産生する化学物質は卵巣へ影響し、卵胞の発育を阻害したり、受精卵に対しても悪影響を及ぼすことが分かってきています。

子宮内膜症は、月経痛や月経困難症をもたらします。
多くの患者さんは、月経がはじまると痛みのため、痛み止めを服用されることでしょう。

この痛み止めの服用についても妊娠への悪影響があります。

月経痛はプロスタグランジンという体内の物質によって子宮が収縮して起こります。
このプロスタグランジンは卵胞を保護し、また精子を呼び寄せる働きのあるケモカインという物質の産生に影響があり、痛み止めのアスピリン製剤を服用すると、結果不妊に陥る可能性がある、と言うものです。
(ページ最上段左写真をクリックして拡大してください)

鍼灸の月経痛に対する効果は非常に高く、また継続して治療を行うことで腹腔内の清浄化を行い、子宮内膜症による不妊症を改善します。

また子宮内膜症によって起こされる強い月経痛・月経困難症のために痛み止めを服用されているのでしたら、鍼灸治療を行って薬の服用がなくても快適でいられる体づくりを目指したいものです。
鍼灸治療ならばそれを目指すことが出来ます。



講演では後半は実技を行いました。

月経期ではスムーズな経血の排泄を目指す治療を、時期が重なりますが卵胞期では質の良い卵胞を作るような配穴を。
黄体期では子宮の血行を改善して良い子宮環境を目指す治療をお話ししました。

良く『一子相伝』とか『企業秘密』とか、人前で治療についてツボやらコツを伝えない有名な先生がおられます。

私は休日を潰してまで患者さんのために勉強しようと集まってくれた皆さんを仲間だと思っています。
だからこの日は何も隠さず、すべてお話ししたつもりです。

子宮内膜症と不妊の鍼灸治療・・・3月28日の講演予定

変な言い回しですが、原因不明不妊の原因は一つの原因ばかりではなく、周期ごとに原因が違うものが多いように思います。

タイミングが悪かった、とか、その周期について排卵がなかった、とか、または夫の精子の状態がそのときだけたまたま悪かったなど・・・生殖とは本当に分からないことばかりです。

また言い方が変ですが、原因不明不妊の原因の一つに子宮内膜症があります。
子宮内膜症であれば、手術や薬によって治療しているではないか?と思われますが、それは比較的重症な子宮内膜症についての事です。

月経痛や月経前の腰痛・腹痛、性交痛などの子宮内膜症によると思われる症状があっても、卵巣の腫れなどがない限りは特に治療せず、不妊治療を行っているのが現状のようです。

子宮内膜症が不妊となる要因は、日本産婦人科学会誌61巻9号に、下記の通り書いてあります。

<卵巣・卵管機能の障害>
 1)卵巣・卵管の機械的障害
 2)排卵障害
 3)卵胞発育の異常
 
<免疫異常>
 1)液性免疫の亢進
 2)抗子宮内膜抗体

<腹腔内貯留液の影響>
 1)活性化マクロファージの影響
 2)サイトカイン

<子宮内膜異常>
 1)着床に必須のサイトカイン産生低下
 2)脱落膜化の異常

以上のような事が書かれています。

およそ鍼灸師の治療に関わりがないような不妊の原因ですが、痛み止め以外に積極的な治療がない特に軽症な子宮内膜症には、【瘀血(おけつ)】の概念のある鍼灸が効果があります。

子宮内膜症の存在は、主訴となる月経痛や出血などの現れ方に特徴があって、およそ90%近くが問診で分かると言われています。

その問診の内容や、子宮内膜症性不妊症の原因、治療について、当院で行っている瘀血(おけつ)治療を主にお話ししたいと思っています。