不妊症

不妊症の患者さんたち(7) 患者さんからのメール(その3・終)

(前回の続き)

いただきましたメールを、ご本人の了解のもとに掲載させて頂きます。個人情報に関する所は伏せましたが、そのほかは手を加えず掲載させて頂きました。

 → ここから

ご無沙汰しております。
以前不妊治療でお世話になっていた●△です。
覚えていますか?

4月初めの最後の治療のときにご相談させていただいたとおり、あの後不妊専門の病院に行きました。

排卵がおきないことには妊娠しないということで、
クロミッドを服用することになりました。

それと同時に、高温期・低温期のホルモンの検査をしましたが、特に異常がないとのことでした。

とりあえず、3ヶ月くらいクロミッドでタイミングをはかろうということになってたんですが、
なんと、1周期目に生理が遅れたので妊娠検査薬を使ってみたら、陽性反応がでたのです!!

長期戦を覚悟していたので、ほんとびっくりしました。

生理が来なければ、今週の土曜日に来院するよう言われていたので、まだ病院で確認していませんが、
妊娠できない体かもしれないと心配していたので、すごくうれしいです!!

これも、先生のところで鍼灸治療を始めて、基礎体温をいい状態していただいたおかげだととっても感謝しております。
ありがとうございました。

先生の治療はご無沙汰ですが、自宅でのお灸はほぼ毎日続けております。

そこで、質問ですが、妊娠してからもお灸を続けたほうがよろしいでしょうか?

もし続けるとしたら、どの部分にしたらよいでしょうか。

まだまだ安心できる状態ではありませんが、お灸が妊婦にも大丈夫であれば、ぜひ続けたいと思っております。

ご回答お待ちしております。

 → ここまで

このようなメールが送られてきました。

心配していた患者さんからのメールだけに、読み終えてから大変安心しました。

いただいたメールに対して、下記のように返信をしました。


 → ここから

白河の三瓶鍼療院です。

妊娠反応が陽性とのこと、まず間違いなくご懐妊したことと思います。大変嬉しいお知らせありがとうございます。

●△さんの治療について、治療期間中に満足のいく排卵があったのがわずかに一回だけで、正直言えば自分の治療を疑うときもありました。
転勤もあって、●△さんのお体を拝見することもなかったので、『あの後どうなっただろうか?』などと考えていました。
右の卵巣部に、ときどき腫れのようなものを感じるときもありましたし、嚢腫でもあって手術になったのでは?とも考えておりました。
そんな折りこのたびのメールは大変嬉しいお知らせです。
本当におめでとうございます。

お灸の方は、たとえば妊娠初期にありがちな胎盤の血栓を予防ずる働きもあります。(注;もともと三陰交のお灸は、下肢や骨盤内の血行を改善することから、血栓形成の予防的効果が期待できると、私は考えています)
しかし、その予防する作用も、受精・着床に至るまでの、これまで行っていたお灸の効果で十分と思います。
(以前に流産などをしたことがあれば、安定期に入るまで逆にお灸をすすめる場合もあります)

ですので、お灸の方はしばらくお休みになり、安定期に入ってからまた行うことをおすすめいたします。具体的には5ヶ月目くらいになってから、一日おきに足首に近い『三陰交』と言うツボにお灸をすれば結構です。

●△さんの場合も、当院での治療の際にお灸を行う場所として印を付けていた場所ですので、だいたい分かることと思います。
もしわかりにくい場合は、デジカメなどで足首付近の写真を撮り、メールでお送りいただければ、こちらでおおよその場所に印を付けて返送させていただきます。

安定期に入った5ヶ月目以降の三陰交のお灸は、逆子の予防と、また臨月近くにあっては産道を柔らかくして安産に結びつく効果が知られています。

また、お灸をしながら出産し、育った子供は体が丈夫であるとも言われていますので、ぜひお灸の方は続けてみてください。

また何かあれば、お気軽にメールや電話で何でもお尋ねください。

なお、いただきました今回のメールですが、差し支えなければ当院のホームページにあるブログに書いてみたいと思いますが、よろしいでしょうか? もちろん人物の特定が出来ないようにさせていただきますので、ご一考ください。

妊娠初期は何かと大変ですので、体をお労りになってお過ごしください。
お大事にどうぞ。

 → ここまで

鍼灸が効いたのか、クロミッドが効いたのか、そんなことは分かりませんしどうでもいいことですが、もしかしたら患者さんが毎日行っていたお灸が一番効果があったのかも知れません。

ほかに、先月からコウノトリさんが飛来していた不妊症の患者さんがいらっしゃいますが、ご了解を得たので数日後くらいに書かせて頂きたいと思います。

不妊症の患者さんたち(7) 患者さんからのメール(その2)

(前回のつづき)

治療は週に一回行いました。
患者さんの仕事の都合で、毎週土曜日に熱心に通院されていました。
初回の治療の時から、他の不妊や婦人科疾患の患者さんに行っているように、この患者さんにも自宅でのお灸をしてもらうようにしました。

鍼灸治療を始め、また自宅でのお灸も始めたからと言って、すぐに好結果が出るわけもないのですが、この患者さんの場合はBBTで見る限り低温期(卵胞期)での推移が長く、なかなか高温期に移行しません。
(その間にも、チクチクした下腹部痛や、違和感などがあったそうですが、排卵や月経には至らなかった)

こんなことが2ヶ月くらい続き、D72(前回の月経開始日から72日目の性周期日)あたりから急に有意な体温の上昇が見られました。患者さんによるとその直前には排卵期にありがちなおりもの(頚管粘液と思われます)と、排卵痛らしき下腹部の痛みや違和感があったと言います。

このあと高温期に入りますが、D87で来潮となります。

ご懐妊に結びつかなかったわけですが、体温の上昇とおりものの状態から、まず間違いなく排卵はあったと思われ、患者さんも大変喜ばれていました。

その後、D16あたりで下腹部の痛み(チクチクとした排卵痛を思わせる痛み)があったりもしましたが、今度は体温の上昇もなく、以前の卵胞期のまま日数が経っていきます。

このような患者さんの場合、一度正常な月経が来ると、その次からはだいたい正常になってくるのがふつうですが、、どうしたことでしょうか? 正直だいぶ悩みました。この患者さんの場合右の卵巣付近に風船のような腫脹もあって、それが何らかの原因のようにも思えてきました。

その頃、
『一度病院で診て頂いた方がいいんでしょうかね?』と患者さんが遠慮がちに言いました。

まだ結婚して日が浅く決して不妊症と言えるような年数も経っていない方でしたが、もしや子供の産めない体では?と大変心配していたのだと、今でもその言葉が耳に残っています。

数ヶ月も治療していて、途中で医療機関に精査を求める、と言うのも、患者さんに対しては大変失礼な話しだと思います。

様々な検査の結果、(私が)器質的な病気を看過ごし漫然と治療していたかも知れないし、鍼灸治療単独で効果がある適応症だったとしても、これまでの数ヶ月自分が行っていた治療が果たして効果があったのか? そんな疑問も当然のごとく浮かんできます。

その患者さんは、そのあと少ししてから引っ越して白河から少し離れたところに転居されました。当院への通院はそれほどしにくい所でもなかったのですが、転居先でおそらくご自身の体の状態を詳しく調べる意味もあって、産婦人科の専門医に受診し、鍼灸治療よりもひとまずそちらの方で治療をされているのだろう、と思っていました。

ほかの不妊の患者さんの治療を行っているときなどは、どうしてもその患者さんのことが気になります。いまごろどうしているかな?などと案じていました。

そして2ヶ月近く過ぎたつい先日、その患者さんから一通のメールが送られてきました。

(つづく)

不妊症の患者さんたち(7) 患者さんからのメール(その1)

バタバタしていて、だいぶ穴を開けてしまいました。

不妊の患者さんは、どこの鍼灸院でも割合多く来院されているのではないかと思います。
ずっと前の記事でも書きましたが、20代の不妊で来院する方は少なく、当院での多くは30代半ばから、40代初めくらいまでの方がほとんどです。

基礎体温をみて、また脈状やお腹の状態(腹診して)、肩こり・腰痛・冷えの状態など、、そういった体の状態を見ながら治療方針を立てます。
冷えが強い患者さんには、特に気の巡りから血の巡りの改善を促すような治療を行い、通常であれば更年期を迎えられる30代後半であれば、卵巣の状態に関連して現れる反応点(痛みや体表の特定の部位に凹みとなって現れやすい)にハリや灸を行います。

患者さんの年代が高齢妊娠傾向にあることから、一般的に不妊の鍼灸治療も数ヶ月〜1年くらいの中期・長期に渡ることが多いようです。

これまでブログに書いた内容は、ご懐妊された方のお話し、また排卵がなかった方が、鍼灸を行うと排卵するようになったとか、振り返ってみると成功例・経過良好なばかりが目立つ書き方になってしまっています。

100%の効果を保証できるわけでもありませんから、患者さんの中には、効果が思わしくなく、治療を中断されている方もいらっしゃいます。大変申し訳なく思う一方で、不妊の治療はのんびり数年もかけて行う気でいる訳にもいかず、それは致し方ないことだと思います。

私の方でも効果が思わしくない場合などは、微妙に治療方針を変えてみたりします。それでも治療に行き詰まることがたびたびあることが現実です。

30代はじめの女性が昨年12月中頃くらいから来院していました。主訴は生理不順(ほぼ無月経状態)。当院に来院する2年ほど前に、やはり生理不順で病院にて治療を受けていたらしいが生理が非常に揮発になってしまい、結婚後このままでは子宝に恵まれないと考えて来院されました。

BBT(基礎体温表)を確認すると、低温期(卵胞期)と高温期(黄体期)の区別がつけにくい状態でした。高温期がはっきりと分かる周期もありましたが、何となく体温が上昇しているだけで、明確な上昇ではありません。

脈状を診てお体の方も診させて頂くと特、腰部、特に仙骨部正中に圧痛があり、左右の志室付近に大きな筋肉のコリがありました。また右>左のとうりに肩こりがあります。

腹部は、下腹部に柔らかい弾力があれば良好ですが、全体的に薄い皮下脂肪の下は堅く、子宮部の直上、右の卵巣部の直上は特に硬さがある(空気を入れた風船のような)ように感じました。

この患者さんには、
1)子宮の発育が未熟な場合が考えられる。
2)卵巣のまわりも張っているので、働きが悪いようにも感じる。
3)そもそも性周期は脳下垂体などから由来するホルモンの働きによってコントロールされるので、ストレスなども原因になりやすい。あなたの体の状態を診させてもらえば、コリや硬さから慢性的なストレスに晒されている、と考えられる。

このように説明して週に一回程度の治療を開始しました。

(つづく)