福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
今日は午後にいらした患者さんに、手作りのおまんじゅうをいただきました。
この患者さんには、前には手作りのカステラをいただいた。もちろん、カステラは大変美味しかった。
さておまんじゅうのお味は?
その前に、毎週水曜の午後にいらっしゃる年配の患者さんから電話があり、『熱が高く、喉が痛い。往診して欲しい』と電話があり、往診に行ってきました。
昨日は市内の総合病院の耳鼻科に受診して薬などをいただき、今日は朝から寝ていたが、熱が高く(38.5度)、大変辛いとのこと。
喉の腫れは大変ひどく、触らずとも目視で分かるほど。
耳下腺炎(流行性はおたふく風邪、と言われる)のようにも思われましたが、嚥下痛が強く、扁桃炎を疑いました。
応急処置的な治療を行い、翌朝になって症状の軽減がなければ耳鼻科か内科の再度の受診をすすめて帰ってきました。
若い人には単なる扁桃炎として薬を飲んで寝ていれば改善するが、高齢の方には嚥下痛が強い場合は水分摂取ができずに脱水を起こすことがあります。
口から水分を摂れない場合は点滴による水分の補充をする必要があるし、どんな症状・病気でも鍼灸だけで治ると思いこんではいけません。
さて、まんじゅうをいただきます。
ごちそうさまでした、大変美味しかったです。
とても素人さんの作ったものには思えない出来です。
標題の言葉はかの有名なギリシアの医聖ヒポクラテスの言葉である。
傷を縫うとは外科手術を指して言っているが、内服薬、湿布、手術、そして私たち鍼灸師が行っている鍼灸も現代では医療行為に含まれるし、ヒポクラテス時代であっても『傷を縫う』行為の中に含まれると思っている。
手術や投薬、そして鍼灸も、病んだ病人に治癒のきっかけを与えるだけで、実際に病気を治していくのは患者の治癒力である。
胃ガンで胃を3分の2切除し、また数年前に腰痛のため腰椎を手術した患者さんが昨日治療にいらした。
たまたまこの日は東京の鍼灸学校に通う1年生が研修に来ていて、その治療をつぶさに見ていた。
『胃も切った(ガンの経過は非常に良好)、腰も手術したのに、腰痛は治らない』と嘆いているその患者さんに、ヒポクラテスの『医師が傷を縫い・・・』の言葉を教えた。患者さんよりも、その研修生に良く聞こえるように言ったつもりだ。
悪いところを手術で取り除いたのだから、あとは飽きずに鍼灸を行えば体力も付いて必ず良くなるだろう。
そんなことも話した。
腹部の手術創はまだ新しく、やっとケロイドが綺麗になってきたばかり。
『鍼灸は効くけど、ちゃんと定期的に病院で検査しないとダメだよ』と念を押す。
ヒポクラテスの誓詞と言うのがある。
医聖・ヒポクラテスが、驕ることなく日常の臨床に携わる者の心構えについて説いた信念の誓いである。
そのなかに、師弟の関係について述べた一節がある。
『・・・この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、・・・(略)・・・彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える』
教えを授けてくれた師を、親のごとく尊敬する。そして教え乞うものには、無償ですべてを授ける、と説いたものだ。
とかく鍼灸の世界では、技術は世襲や一子相伝とか、そんな秘密技のようなものが多いようだ。
私には身近なところに尊敬する鍼灸の先生がいる。
その尊敬する理由は学会での発表などの学術的な功績ではなく、多くの患者に囲まれて繁盛していることでもない。なによりも後進の若い鍼灸師を育てているところだ。
夏休みを返上して勉強しに来るこの学生は、もともとは当院の患者だった。銀行員という安定した職業を捨て、定年まで数年という年月を顧みることなく退職したそうだ。自身の将来の夢は、人々の健康作りに関わり役に立てるようになることだ、という。『鍼灸師を目指して今学校に通っている。先生のところで時間があるときに勉強させて欲しい』と現れたときには正直困惑した。しかしこの道を志した動機を聞き、心から歓迎した。
私のところでは学ぶべきものはほとんどないと思うが、何かを感じてもらえたら大変嬉しいものだ。
数カ月ぶりに訪れた50代後半の男性の患者さん。
この方は当院で時折腰痛や肩こりの治療を行っていた。
農作業をしながら金属関係の会社に勤務していて、かなり体を酷使する人だった。
田舎に自宅を構えたとき、丁度近所に住んでいたこの患者さんは、山菜採りや山芋掘りなど、田舎でしかできない山遊びをいろいろ教えてくれた。
この日は腰痛を訴えて鍼灸治療にやってきた。
夜間痛や自発痛もなく、いつもの筋膜性の腰痛のようだった。
『しばらく仕事(お勤め)を休んでいて、昨日から仕事に行き始めたから痛くなったのかも』と、その患者さんは力無く笑う。
農作業が忙しくて休んでいたのかと思ったら、
『直腸ガンで手術して2ヶ月入院していた』とのこと。
その割に腹部には手術創はなく不審に思うと、内視鏡で手術したとのことだった。
脈や腹診を行っても特に虚や病邪の現れは感じなかった。とりあえず通常の治療を行った。
内視鏡でできるかどうかぎりぎりの大きさの腫瘍だったようで、治療中に話す患者さんとのやりとりの中では、これからのことが心配な様子だった。
腰痛の圧痛は上部腰椎外方の脊柱起立筋に沿って現れているが、以前にはなかった仙椎中央付近に叩打痛と強い圧痛があった。仙椎の変形などによる整形外科的な異常と言うよりは、むしろ内視鏡手術を行った外科的な侵襲による治癒過程の後遺症や、または潰瘍や瘢痕などによる関連痛のようにも思えた。
『ハリを続けたらガンはすっかり治るだろうか?』
そんなことを縋るように言う。
ハリ治療でガンそのものが治るか、体から駆逐できるかは約束できることではない。
しかし良好な体調を維持することは、あらゆる病気の予防には効果がある。
もともとこの患者さんは便秘がちだった。
食生活も便秘を解消することを考え、圧痛のある仙椎上と足三里に自宅で毎日お灸を続けるように指導した。
なんとか病気を体から追い出してあげたいものだ。