福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
9月10日・11日と山形県天童市で開催された東北鍼灸学会で、東北青年部臨床講座『不妊治療のコツ』と題した実技込みの講演をしてきました。
不妊症にたいする鍼灸治療の手法は様々な仕方があります。
当院で行っている治療のうち、
・卵胞期(基礎体温低温)のときの排卵誘発を狙った配穴。
・黄体期(基礎体温高)のときの、安定した黄体の状態を作る作る配穴。
・排卵がはっきり起きない場合などに対する配穴。
・胚移植後や妊娠初期の配穴と治療。
・男性不妊に対する配穴。
・三陰交と至陰にプラスする逆子(さかご・骨盤位)の治療法。
・不妊のタイプ別(肝鬱・痰湿・腎虚)による本治法の配穴。
以上を実技を含めて講演してきました。
さかごについては、当院では治癒率は80%を超えていますが、よく知られている三陰交の灸頭鍼と至陰の灸だけでは改善率はいいところ50%程度ですが、講演で紹介した安全で簡単な技術をプラスすると、治癒率が驚くほど向上します。
縁あって、福井市の鍼灸院さん主催の講演で不妊についてお話しさせて頂く機会がありました。
参加される方はそんなに多くないようなことを、主催された福井市・ハッピー治療室の佐竹院長から聞かされていましたが、会場に着いたらびっくり!
子宝を希望するご夫婦さんたちが予想以上に来場され、急遽、机や椅子を増設したり、ありがたい予想はずれでした。
講演は一般の方向けに分かりやすくしたもので約2時間お話しさせて頂きました。
・ストレスがなぜ不妊に悪いのか
・冷えがなぜ不妊に悪いのか
・血行が悪いと、なぜ不妊に悪いのか
以上についてと、
・痛みやこりなど苦痛のない快適な生活が自然妊娠の近道
これらについてお話しさせて頂きました。
そのあとは、ハッピー治療室のスタッフの方や佐竹院長直々に、家でご自身が出来る冷えの解消や妊娠しやすくなるツボについて、参加者一人一人に指導されていました。
流れから、何組かのカップルさんたちから、不妊についての様々な相談を受けました。
一人目不妊(原発性不妊)、二人目不妊(続発性不妊)、体外受精の相談(最近、採卵できなくなってきた)、男性不妊(超の付く乏精子症)などについての相談でした。
お話を伺っていると、年齢や不妊歴からの、時間的な焦りがほとんどで、その焦りから専門医での治療でのステップアップも積極的に受け入れてきて、なお子宝に恵まれないために行き詰まっている、というものが多かったです。
子は授かり物といいます。
ほとんどのカップルで、焦らず、もうちょっと自然な夫婦のあり方を意識して、できたら鍼灸や自宅での灸などもおこなってみたらやがて赤ちゃんが授かるのではないかと感じました。
超の付く乏精子症の方にしても、何度か採卵して受精をされていたそうですが、ICSIなどの技術がたいへん進歩していますし、ご夫婦揃って鍼灸を行うと成功率もずっと良くなると思いました。
精子数(濃度)が鍼灸によって大変改善する事も分かっていますし、失念していてお話しできませんでしたが、精子濃度が少ないため、採精した精子を凍結保存しようとしても、融解すると全滅する精子が、鍼灸を行うと凍結に耐えうる精子になった症例当院にはあります。
少ない精子でも質や生存性が上がれば、採精したその都度凍結保存し、まとまった濃度・量にしてから受精を行う専門医もあります。
多くのカップルは、いずれコウノトリが飛んでくる未妊の状態だと強く感じました。来場された皆さんのもとへ、早くコウノトリが飛んでくることを願っています。
5月22日(日)は、山梨県鍼灸師会学術講習会で講演をさせて頂きました。
不妊症の最新治療と鍼灸治療、という演題をいただいていましたが、特に自然妊娠を目指した鍼灸治療についてお話しさせて頂きました。
鍼灸院に不妊で治療にいらっしゃる方はまずほとんどが女性です。
35歳以上で初婚を迎えられた方が多くなってきている。そして30歳以上の女性について卵巣予備能について触れ、男性についても加齢による精子数の減少などの可能性について時間を割いてお話しさせて頂きました。
<スライドの一部>
不妊症の原因として、まず女性と男性ではほぼ半数の原因を持っていると2007年の厚生労働省の発表があります。
1930年代から1990年代までの世界中の生殖年齢にあたる男性の精子数に関する61論文の分布のグラフから、世界中で精子数の減少が起きていることが分かります。
また別のスライドで出生年代別に見た精巣の加齢による重量の変化では、1920年代に出生された方の場合、加齢による重量にそれほどの変化は見られないのですが、現在30歳代より若い方は、10代の頃にピークを迎え、だんだんと重量が軽くなることが示唆されます。
精巣の重量が軽くなると言うことは、そこから作られる精子の数が減ることを意味します。
草食系男子、と大人しくなった若者がよく言われますが、精子数も10代ころにピークを迎え多くの方が結婚される30代には精子の数も減少傾向になっているようです。そのピークさえも70年前の男性よりもずっと少なく・・・。
女性の方が取りざたされやすいのですが、子宝に恵まれないカップルの多くは、男性不妊とまで行かなくとも少なからず夫側にも問題があるようです。
精子の少ない、運動率の悪いなどと言った乏精子症による男性不妊に対して、少ない症例からですが鍼灸に良い効果のある可能性をお話しさせて頂きました。
また大震災・原発事故のさなかにめでたくご懐妊された
方が数人あり、思い出深い症例として紹介させて頂きました。