福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
今年初めてのブログ書きとなりました。
今年は雪のない正月をありがたく過ごし、4日から診療をはじめました。
2回流産を繰り返していた方が、里帰りのついでに年明けの治療にいらっしゃいました。
遠方へ嫁いでいて当院への通院ができない方でしたが、
一年前に治療に来た際、指示していたツボへのお灸を真面目に行っていた効果か、おかげさまで現在20週で安定しています、とのことでした。
大きくなってきたお腹を一目見て、私も安堵した次第です。脈もお腹の状態も良く、特に治療の必要はなかったのですが、今度は逆子や出産に備えてツボを取り、デジカメや携帯のカメラでツボの場所を撮っておくようにしました。必要があればその場所にお灸をできるように・・・。
当院へいらっしゃる不妊・不育症の患者さんには、自宅灸をすすめています。
この患者さんは病院で不育症の検査を受けて、すべて陰性であったと言うことでしたが、冷えの症状が強く、基礎体温も全体的に低めの方でした。
お灸をはじめると基礎体温が全体的に上がりはじめ、冷えの症状もだんだんと緩和されてきたと言うことでした。
その後妊娠され、特に問題もなく今に至っている、とのことでした。
妊娠されたとき、お灸は続けて方がいいのか、同じツボでいいのか電話で相談されました。
ツボは三陰交(さんいんこう)を左右に一日おきに行うという簡単なものでしたが、良い効果があったようです。
当院へは子宝を望んで不妊症の方以外にも不育症のかたがいらっしゃいます。
高リン脂質が原因であったり、血液凝固の第12因子の異常であったり、またはっきりとした原因の分からない患者さんもいらっしゃいます。
流産回数も2回から3回の方が一番多いのですが、4回の連続流産経験があっても、鍼灸を行いながら自宅でもお灸を行い、無事出産された患者さんもいらっしゃいます。
嫌な煙も出るし、痕もつく。またうっかりすると火傷で水疱ができたりと、なかなか辛いお灸だったりするのですが、それを厭わず続けられたことが良い効果を生んだのでしょう。
月経痛のため服用する痛み止めの薬が不妊の原因になりうることは、痛み止めの服用という点で子宮内膜症と含めて、
以前の記事
http://www.sanpei89in.com/diary/diary.cgi?no=752
こちらに書いてあります。
月経痛は主に子宮を収縮させるプロスタグランディンの作用によるもので、痛み止めはプロスタグランディンの働きを緩和させます。
ところがプロスタグランディンの種類によっては、受精を助けるケモカインという物質の産生に関与している、と言うものです。
ケモカインは卵子を目指して卵子が泳いでいくために必要な物質だということです。
さらに卵子に一匹の精子が突入して受精することを助ける働きも、このケモカインにはあるそうです。
痛み止めのせいでプロスタグランディンの作用にブレーキがかかると、ケモカインの産生がうまくいかず、精子が卵子にたどり着けなくなることや、受精そのものがうまくいかなくなる可能性がある、と言うことです。
研究者である京都大学の杉本準教授の研究内容
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/physchem/sugimoto_work.html
当院の不妊治療では、特に自然妊娠を目指すためには、痛みのない月経期になるよう、全身の気血の巡りを改善するような治療を行っています。
・・・と、某日の夕方、初めて治療にいらっしゃった患者さんに説明しました。その患者さんは月経痛のため、ロキソニンを毎回のように服用しているそうでした。
たまたまそのベッドの向かい側で、やはり初めて不妊治療にいらっしゃった患者さんが先の不妊治療の新患さんと同年齢で不妊歴や痛み止めの服用まで一緒で、カーテン越しに全く同じ説明をしたのでした。
月経痛のため痛み止めを服用している方は非常に多く、薬ではなく鍼灸をおすすめいたします。
前の記事で予告を書いたとおり、10月10日・11日の大6回日本鍼灸師会全国大会(京都)で、不妊症について講演してきました。
その報告を書いてみたいと思います。
会場は京都テルサ。
大変広くて立派な会場です。
受け持つ講座は、大会2日目9時〜11時50分の『不妊症』でした。
京都テルサの玄関前にて、これから戦場へ乗り込む三人。左から中村先生、秋森先生、私。
この大会は後援が厚生労働省、京都府、京都市、日本医師会、東洋療法研修試験財団、全日本鍼灸学会、東洋療法学校協会、KBS京都、京都新聞となっていて、看板を見ると身が引き締まります。
約三時間の講演ですが、講師は私を含めて2名のダブル講師。もう一人の講師は地元京都府鍼灸師会で学術部長をつとめられている中村一徳先生。
中村先生のweb http://hari-9.com/
座長は群馬県鍼灸師会副会長の秋森徹二先生。
秋森先生も不妊治療には一家言ある先生で、この方が座長をしてくれるなら、と言う事で、中村先生と私の講演が実現しました。
秋森先生のweb http://www3.ocn.ne.jp/~sinkyu/
講演は2部構成で、座長の秋森先生の、不妊症の国内の発生割合や年代別の治療、無治療による生産率や妊娠率の解説から始まりました。
ついで私と中村先生と分担して不妊症の基礎知識についてお話ししました。
写真は部位別に不妊の原因を話しているところ。
講演の後半は、前日に私と中村先生の妊娠100症例から参加者にアンケートを取り、集計によって選ばれた6症例について、私と中村先生で3症例ずつお話ししました。
私はごく普通の鍼灸師ですし、中村先生はART実施施設と近いところでの仕事をしています。おのずと話す内容や治療のベクトルは異なっているかと思いきや・・・
中村先生が話す内容は、私にもうなずけるところが多かったのでした。
中村先生は高度先進生殖医療(ART:補助生殖医療)を行う京都でも有数の医療機関・醍醐渡辺クリニックと提携し、滋賀県栗東市のちばレディースクリニックで鍼灸による不妊外来を受け持っておられます。
(講演中の中村先生)
『空席ばかりだったらどうしようね』と、前日、中村先生と秋森先生と笑いながら話していました。当日準備した席は168席でしたが参加者が多く補助椅子を出しても足らず、立ち見が出る・・・混雑していて、会場には入れないで帰った先生もたくさんいたとか。延べで300名の入場者があったとは、会場の責任者の先生の弁。
学会全体では1000人を超えた参加者だったとか。
この時間帯は、別の会場で青年部の講座があって、現役の青年部委員の先生は不在でしたが、前青年部委員の先生たち、前日鍼会青年部長の近藤先生などがずっと会場で見守ってくださっていたのでした。
2泊した京都でしたが、大変実り多く思い出に残る学会となりました。