福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
これまで縁あって、青森や山形で不妊症について講演をさせて頂きました。
多くの患者さんを治療させて頂き、経験を積ませて頂いたことはありがたいことだと思います。
治療を通して子を授からない事のつらさもよく分かってきました。
このたびは、日本鍼灸師会全国大会も6回目にあたる京都の大会で、光栄にも不妊症についてお話しさせて頂くことになりました。
講演時間は2時間50分。
講師は私のほか、地元京都で高度生殖医療を行う複数の専門医と連携して鍼灸を行う中村先生。
座長は群馬県鍼灸師会副会長の秋森先生。
中村先生は数年前に京都で行われたプライマリケアの国際学会で英語で講演されたほどの先生です。
これまで数度、講演の打ち合わせを行い、それぞれの症例をスライドに作ったものを見せ合いましたが、中村先生のものはさすがに病態の把握の客観性はすばらしいものです。
気後れせず、がんばって講演したいと思っています。
当院に通われている患者では、排卵日を予測する市販のチェッカーを使われている方が多いようです。
尿中のLHホルモンの急激な上昇(LHサージ)のあと、約36時間で排卵するという体内の仕組みを利用したタイミング法ですね。
チェッカーで反応が出た後、どのくらいの時期が妊娠しやすいのか?と訊かれることがあります。
↑クリックで大きくなります。
上の図を見て頂くと分かりますが、排卵時、排卵後の性交では妊娠する確率が著しく低いことが分かります。
データでは、排卵前2日あたりが一番妊娠率が高いことになります。
ところが(女性)不妊症の原因の一つに、排卵障害というのがあります。
LHサージが起こってもスムーズに排卵できなかったり、またそもそも卵胞の発育があまり良くなくて、そのために排卵がうまくいかないことも多いようです。
こういった障害にも鍼灸はよい効果があります。
話しを戻せば、チェッカーで陽性になっても、尿検査を行ったときにちょうど陽性になった、と言うわけではありません。
結局は何度かチェッカーを使って体調の変化(基礎体温・また粘調性の帯下の出現など)とチェッカー陽性日の関連を感じ取り、排卵する前からタイミングをとれるようにする、と言うことが大事なようです。
それからもっと大切なことは、一発必中ではたいてい外れます。下手な鉄砲・・・とはあまり良い言い方ではありませんが、数日間は連日励まれた方がよいだろうと思います。
さかご(骨盤位・逆子)でもないのに帝王切開になる原因の一つに、胎盤が子宮口付近に成育する前置胎盤があります。
原因については、受精卵の着床部位が低く、子宮口付近に着床すると前置胎盤になりやすい、などという説もありますが、定説はないようです。
軽度の前置胎盤の一つとして、胎児の頭より胎盤の下縁が下になる低置胎盤というものがあります。
妊娠週数が早ければ、大きく成長する子宮につられて、胎盤も上方に移動するのが普通なようで、だいたいは経過観察し、出産月近くになって改善がなければ、帝王切開の適応になるようです。
(子宮口に胎盤の一部でもかかったり、やはり胎児の頭部より胎盤の下縁が低ければ、胎児の娩出時に出血が大きくなりやすく、リスクの大きい出産となる、とのこと)
二人目不妊で当院で治療をして無事自然妊娠(一人目も当院の治療で自然妊娠され、無事女児を自然分娩されています)された39歳女性で、妊娠32週5日(32W5D)が、この低置胎盤のため治療に訪れました。
幸いにも改善し、自然分娩が可能となりました。
当院では妊娠後の鍼灸は、特に当院で不妊治療をされていた方には妊娠20週まですすめています。心拍が確認できるまでは週に一回で、その後は2週に一回程度の頻度で鍼灸を行います。
妊娠初期から安定期までの治療は、母胎の状態を安定させ、日々大きくなって行く子宮の血行を良い状態に保ち、無理なく自然分娩できる体を作る効果があると思っています。
※記事中の写真は、メディックメディア刊 『病気が見えるVol.10 産科』P110,P111より