福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
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女性不妊用問診票の解説の最終になります。
患者さんのライフスタイルを問う項目があります。
赤線を引いているところが特に重要なところとなります。それ外にも、たとえば飲酒量が多い方の場合は、『アルコール摂取量が多いと体内の葉酸が少なくなることがあり、妊娠した際に胎児に影響があることがある』と覚えておくとよいでしょう。
葉酸は極端に不足すると妊娠初期で二分脊椎などの奇形が発生しやすくなると言われています。また葉酸は妊娠前の摂取が不可欠で、妊娠してからあわてて摂取されてもあまり効果はないようです。
飲酒量の多い方については特に注意された方がいいでしょう。
喫煙についてですが、喫煙者の早期閉経が非喫煙者の2倍になることから、これも注意を要する項目です。
睡眠不足を問う項目があります。これは非常に大切なところだと思っています。睡眠不足は体内時計を狂わします。視床下部〜脳下垂体系のホルモンのシステムを崩す原因と私は考えています。朝になったら気分良く起床できて、おいしく朝食を頂けるような体調が大切と考えます。
ご夫婦間について問う項目があります。
お子様を望んでいらっしゃる方は?との項目があります。当然奥様が望んでいらっしゃる、と思われるでしょうが、記入された方の中で、一番強く望んでいらっしゃるのは?と質問されることは大切だと思います。
不妊の原因の半数は男性にあるのに、女性の患者が多い事実から、また普段患者さんに接していて感じることは、女性が原因のすべてを背負っているかの印象を受けるからです。
つまり、『主人に、親に申し訳ないから』と常に負い目を感じていらっしゃる可能性があると言うことです。
ほかの動物に比べて人間は不妊の多い生物だと思いますが、この原因の一つはそういった感情や知性があるからではないかと思います。様々なストレスが害になりますから、診察をすすめる上で、たとえ一度の精液検査をして合格したからと言って、不妊の原因のすべてが奥様にあるわけではないと、治療の合間にお話しされると良いでしょう。
性交渉について問う項目があります。
なかなか口頭で訊くことが難しいところで、問診票ならではの項目なのですが・・・ここが2〜3回前後くらいであれば排卵期ばかり狙って性交渉を持っていることが推定できます。当然、妊娠しようと思えばタイミングは大切なことですが、自然妊娠されている方の多くは、タイミングばかりにとらわれず・・・つまり妊娠ばかりを意図しないで性交渉を持たれている印象があります。
ただしデリケートな項目だけに、この部分に立ち入って質問する場合は何度か治療を行ってから、しかも一回だけ、の方がよいでしょう。
性交時に、痛みやまた不快感など感じる方も多いようです。痛みは、特に腹部などで感じる場合は子宮内膜症の場合もあります。またそもそも性交渉が嫌いな方もいらっしゃいます。
ご主人について問う項目があります。
主に精液検査をしたかどうか、その結果と、精液検査をしていなかったら、流行性耳下腺炎とそけいヘルニアの既往を伺います。
精液検査をしていない場合はもちろん受けて頂くことが必須となりますが、この2項目は精液検査を受けていない方の場合は特に注意を要します。(今後、この項目について変更の可能性があります)
(まとめ・終につづく)
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上の段に過去の妊娠歴を問う項目があります。
一人目不妊だけではなく、二人目不妊の方もおおくいらっしゃいます。
また、初期流産の経験のある方と、まったくそれすらなかった方との治療、対応は大きく変わると思います。
ここの部分では、記入が空欄であっても、初期流産すらなかったかどうか、初診時に問診された方がよいでしょう。
患者さんによっては、初期流産(科学的流産)を妊娠にカウントしない、と理解されている方も多くいらっしゃいます。
習慣性流産(3回以上の流産)や反復流産(2回の流産)には、初期流産の回数は含まない、と言うことからでしょうか。
余談ながら、初期流産はほとんどの女性が経験する事だと言われています。生理が遅れて来た・・・実は初期流産だったことが多いそうなのです。
過去の妊娠歴の次には、現在のお体の状態を問う項目があります。鍼灸師であれば、これは瘀血とPMSの有無を伺う項目だとわかることでしょう。
この項目で、瘀血の症状が多い方は、腹診などでの腹部の圧痛などと合わせて評価し、あまりにも腹部の瘀血が強い場合、また月経痛も合わせて酷い場合は子宮内膜症の存在を疑います。
繰り返す子宮内膜症による炎症は、子宮や卵管・卵巣の癒着を引き起こし、また卵巣に出来た子宮内膜症は卵巣のチョコレート嚢胞と呼ばれて卵胞の質の低下を起こし、難治な不妊の原因の一つとされます。場合によっては再度専門医の診察をすすめます。
PMSや、月経痛、瘀血症状は、治療の効果の推移の判定として使えます。5診時、10診時、また周期ごとにBBTと合わせて状態を確認されると良いでしょう。
(3)につづく・・・
つい最近ダウンロード出来るようにした女性不妊治療用の問診票について少々書いていきたいと思います。
女性不妊治療については、いくつかのチェックする項目が必須となります。要点だけ押さえておけば、取っつきにくいと思われる治療もスムーズに運ぶと、青森では講演させて頂きました。
問診票にもなる、チェックリストにもなる、我ながら良くできていると自画自賛しています(笑)
すでにダウンロードしてお持ちされた患者さんが数名いらっしゃいまして、狙った初診時のチェック項目の漏れもなく、またやはり大幅に診察の手順が省力化できました。
もしお使いになられる先生がいらっしゃいましたら、ぜひダウンロードしてお使いください。先生の治療院に合うように改造できるよう、ワード形式でアップロードしてあります。
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注意すべきは、産婦人科などでの受診歴があるかどうかです。統計上、不妊の原因の半数は男性にもありますし、不妊歴がやはり2年以上ある患者さんについては受診をすすめたいところです。
また患者さんによっては、様々な治療を行っても妊娠されなかった、妊娠しても挙児を得られなかった方もいらっしゃいます。一定期間鍼灸を行っても妊娠されなかったり、40歳前後の年齢では、鍼灸単独での治療は慎重に行うことが望ましいと考えます。
頼られることはありがたいことですが、安全に出産出来うる年齢も考慮し、再度専門医の受診をすすめる事も考慮したいものです。
専門医での検査、治療経験がある方の場合は、その内容を書いて頂きます。書かれた内容については、再度診察時に確認しましょう。
特にクラミジア感染があった場合は、子宮卵管造影の結果と共に、(卵管の問題で)自然妊娠できるケースかどうかが推察できます。
クラミジア感染は、卵管炎などを起こし子宮などの周囲の臓器や腹膜などと癒着したり、卵管そのものを閉塞させます。
子宮卵管造影は、水性の造影剤を使う場合(検査は一日で終わります)と、油性の造影剤を使う場合があります。油性の造影剤は通常、当日と翌日に検査するようです。翌日の拡散具合を診ることによって、卵管の通過性や形状以外に周囲との癒着の具合を診られると言うことです。
余談ながら油性造影剤で子宮卵管造影を行うと、卵管の掃除(フラッシング)をして、結果、時として卵管の通りが改善して妊娠しやすくなる場合がある、と言われています。
水性の造影剤ではそういった現象はあまりないそうです。