福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
妊娠中は、脈は浮で数脈となります。
基礎体温も妊娠期間中は高温でずっと続くし、微熱状態であるから当然と言えば当然で、刺鍼も深度は浅く刺入する必要があります。
治療は月に1〜2回程度の頻度で、そんなデリケートな治療を妊娠中も続けました。
お灸も自発的にずっと続けられました。
高齢妊娠に多くありがちな妊娠中毒も起こらず、悪阻(つわり)もたいしたことなく、順調に月日は過ぎていきます。(ときどき、だるくて、横になると起きられなくなる、という記述がカルテに散見されます)
来院するごとに大きくなるお腹。
それにつれて腰椎の後彎が強くなり、腰痛を訴えることが多くなってきます。
大きく突き出てきたお腹のため、うつぶせの体位が取れず、横向きのまま治療を行ったりしました。
『この歳で妊娠して子供を産むって辛いですねぇ』
そんな事をいいながら、実は私にはちっとも辛そうには聞こえませんでした。
そして、出産を控えて実家に里帰りしました。
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当院が移転したその冬に、その患者さんが幼いお子さんを抱いて来院されました。
乳児を抱えて家事や仕事など、本当にめまぐるしい毎日だそうです。
そんなストレスの状態を物語る、ひどい肩こり状態。
『この歳で子供を育てることって、本当にしんどいことですね』
そうつぶやく言葉からは、疲労困憊と言った心身の疲れよりも、無事出産してその子供が異常なく育っている安堵感が伺えました。
ある日・・・
その新米ママが、今度は1歳になったかならずかのお子様を治療に連れてきました。
『風邪ばかりひいて、咳や熱で保育所を休みがちなのです』と、お母さんは言います。
不妊から始まった2代目のその幼い患者さんには、
ローラー鍼を用いての小児鍼治療を行いました。
ローラー鍼が痛いのではなく未知への恐怖というべきか、普通の乳児なら大声で泣いて抵抗するのですが、その幼い患者さんは好奇心からか大きな目を開いたまま治療を許します。
妊娠中も行っていた治療が、胎教になっていたのかも知れません。
スキンタッチという家庭でお母さんやお父さんなどご家族が乳幼児に対して行える健康法があります。
小児鍼(小児ハリ)に限りなく近い治療法、健康増進法なのですが、治療のときにこのお母さんに、スプーンや歯ブラシなどを使って実際にやり方を教えました。
根がまじめな方ですから、すぐに家庭で実践されたようです。
このお子さんはすっかり咳や発熱がおさまり、通ってい保育園を休まず登園するようになったそうです。
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今年、この患者さん一家はご主人の転勤にともなって関西に転居されました。
ご一家のご多幸と繁栄を遠い空から祈っております。
一口に不妊と言っても、原因の半分は男性側にあるようですし、女性側の原因ではあっても実に様々な原因があるようです。
ざっと上げても、頚菅粘膜由来のものや、卵巣・卵胞・卵子・卵管の異常、また子宮の発育具合や内膜症・筋腫の有無、子宮内膜の厚さの問題(薄くても厚過ぎても良くないらしいです)などなど。
一般的な産婦人科では、基礎体温表(BBT)のほかに採血してのホルモン検査や、画像診断、また卵管などへの通気や注水検査、場合によっては腹腔鏡などを用いて、可能な限り不妊の原因を調べ、その上で効果的な治療を選択するのが普通です。
当院に不妊症に患者さんがいらっしゃれば、まず、患者さんが基礎体温表(BBT)を持参していらっしゃれば、それを確認します。たとえばBBTから排卵が正常にあるのかどうかを推定し、また排卵後の黄体期の期間の長さ、体温の上昇具合、そこから体温が下降し生理に入り、卵胞期の期間の長さ、体温の状態などを見て患者さんの状態を把握します。(まだまだ浅学なので把握する努力、と言う感じでしょうか)
前にも書きましたが、先代(父)は脈診で熱や寒の状態を診て治療を行い、良い成績を上げていました。
それを見ていた私も、不妊治療を行うようになったはじめの頃は、分かっても分からなくてもとにかく脈を診ることを怠らないようにしていました。
もうすでに今では4年も前のことになりますが、木枯らしの吹き始める晩秋の夕方、ある30代後半の女性が治療に来られました。
主訴は不妊症とのことだったのですが、不妊歴は8年で、産婦人科での治療は1年くらい。デリケートな年齢から冷えや肩こりなど、苦痛が体のあちこちにあって、不妊と言うよりはその治療を希望しての来院でした。
ご主人の転勤で関西から一緒に白河に来られたその方は、休職してはいましたが医療職と言うこともあってか、話し方もはっきりしている知的な女性でした。
治療はおおむね週に一回行いました。
体を拝見すると、不妊になるような大きな原因はなかったように覚えています。ただやはりホルモン治療などによって体に一時的な疲弊状態が起こり、そのために前からあった冷えや肩こりが辛くなっているようでした。
その頃の治療ではBBTを確認することはなかったので、とにかく脈を診て寒や熱の状態を平均化し、下半身、特にへその下と足に温たかみが出るような治療を行いました。
治療の効果は数回で現れ始め、肩こりや冷えなどが次第に改善し始めました。
患者さんも子供が出来なかった事への不平や不満などは全く言わず、『今日は治療が終わったら主人と仙台まで映画を見に行くんです』とか、『連休は猪苗代方面で温泉三昧してきました』などを明るく話す、そんな天真爛漫な方であった印象が強く残っています。
裏を返せば、結婚して8年も子宝に恵まれなかった、あきらめの心境がそう振る舞わせていたのかも知れません。
ご主人が出張で海外に出かけるようになり、この女性も関西の実家に帰ることが多くなりました。そして帰省中に不妊治療で有名な京都の治療院で治療を受けてきたとか、体が温まる効果があるという、ヨモギで作った腹巻き(ヨモギを仕込んだ?腹巻き)を治療の時に見せ、『先生〜これ効きますよ〜 冷え性の人にすすめてあげてください』など話したことも良く覚えています。
『実は自分で三陰交(ツボの名)にお灸をはじめたのですが、ここの場所でいいんでしょうか?』
治療をはじめて間もない頃に戻りますが、自分でお灸をはじめられたことも思い出します。
しかし不妊の直接の治療と言うよりも、バランスを失った体の状態を少しでも改善したい、というような意図の方を強く感じました。
やがて年が明け、春が過ぎます。
長く辛い冬が去り、輝くような新緑の季節がやってきたかのように『先生、妊娠しました♪』というまさかの報告があり、驚くやら嬉しいやら。助手の添田さんともども小躍りして喜んだものでした。
つづく
今日は午後には気温も20度を超え、やっと約束していた春が訪れたように感じます。
今日は午後早くには40代後半の女性の患者さんがお越しになられました。
当院へは昨年8月末くらいからの通院です。
通院回数は現在までで19回。
遠方からの通院で、しかも多忙な職業柄、定期的な通院が困難な方です。
1月2*日、3月1*日、1*日に行ったAIHは残念ながら成功に結びつきませんでしたが、発育卵胞が確認でき(今まで3年に一度くらいしか排卵したことのない右の卵巣から:28φ×1)4月1*日にAIHを行うことが出来ました。
ブログのこの日に書いた患者さんですが、鍼灸治療を行う前は性周期全般に渡って発育卵胞があったりなかったり、排卵も嚢胞で終わる場合が多かったのですが、ここ数ヶ月はだいぶ改善したと患者さんも喜ばれています。
また『30台と高値だったFSHも10台で落ち着いてくるなど、ホルモン値の改善も見られているんです』と患者さんから聞かされました。
訪れた春がコウノトリを連れてくることを祈りながら、今日も治療を行いました。