No.173の記事

冬季学術講習会

我が鍼灸師会では、春・夏・冬の年に三回の定期学術講習会を開催しています。
県民の健康を守る一役を担う鍼灸師として、こうした研修を定期的に受けることは、大切な義務であると常々考えています。

11月26日(日)には、郡山市ビッグアイにおいて冬季学術講習会が開催されました。
朝10時半より、午後3時まで、午前午後にわけて一部・二部と研修を行いました。

一部の講師は、福島県立医科大学付属病院長、医科大学副理事長、福島県医師派遣調整監という超多忙、要職に就いておられる菊地臣一整形外科教授。

 国内の整形外科だけではなく国際腰椎学会会長(2005年)もお務めになられ、またスウェーデン・イヨテボリ大学から名誉医学博士号を授与されるなど名実ともに世界のプロフェッサーである菊地先生のご講演。



講演タイトル:『頚椎損傷と腰痛治療に対する新しい流れ−Evidence-based medicineの概念から−』

先生の講義では、世界の文献から頚椎疾患、腰痛などの複雑な痛みの発現の機序や、それに対する様々な治療法の有効率についてお話し頂きました。

西洋医学は科学的である、とは思われがちであるが、決してそうではない。いまだに分からない分野も多数ある。私の常々思うところは、医療や治療する行為はサイエンス(EBM)とアート(NBM)である。と菊地先生は言葉を結ばれていました。

菊地先生の提唱されるサイエンスとアート、EBMとNBMとの統合は
http://www.emec.co.jp/hareruya/vol4/ebm_nbm.htm
こちらに詳しく書かれています。

また菊地先生は鍼灸のEBMについても米国国立衛生研究所(NIH)でのコンセンサス表明文書に基づきお話しされました。

講演の終わりに時間いっぱいまで質疑応答が行われましたが、大変活発な質問の挙手があり、質問者を指名するのが非常に大変でした。

ある鍼灸学校3年生の質問で下記の質問がありました。
『椎間板ヘルニアであるとMRIにて確定診断された患者がいるが、病巣のヘルニアの位置と症状の出るところが一致しない患者がいる。こういった患者の場合、徒手検査でのジャクソンテストなどである程度診察した結果を信じて良いのか?それともMRIでの検査結果が絶対であるのか?』といった、質問の内容は非常に分かるが、ある意味非常に質問しにくいもの。

自分だったら絶対質問しないであろうというものだが、菊地教授はにこりと微笑み、『良い質問です。MRIは絶対ではありませんし、徒手検査の方が信じられる場合もあります。ただしジャクソンテストは、やり方によってはヘルニアを悪化させることもあるので、やるときは気を付けてやってください』と回答してくださいました。

 この日の参加は、鍼灸師会会員+鍼灸学校学生+一般鍼灸師などで、約130名。
椅子が足りるか心配しましたが、何とかなりました(汗) 新聞社も福島民友、福島民放さんとも取材に来てくださいまして、大変盛会な講習会となりました。



我が鍼灸師会での講習会は、常に最新の医学について学ぶ一方、実践で役立つ実技の講習や伝統ある古典医学の研究など、あらゆる分野で役立つようバランス良く企画しています。

二部の講師は、より日常診療に役立つスポーツ鍼灸の講演と言うことで、赤門鍼灸柔整専門学校講師で、先生ご自身で鍼灸院の三代目という亀井啓先生。

 亀井先生のご講演タイトルは『スポーツ障害の鍼灸治療』

ご講演は特に下肢の障害で、シン・スプリント(脛骨疲労性骨膜炎)のX線像を見ながら、炎症性変化などの部位の解説や、実際の治療を実演して頂きました。


 実技風景の一枚。
 脛骨の圧痛部位に刺入し、独特の運動操作を行う講師の亀井先生と、熱心に見入る受講者。
 シン・スプリントが発生しやすい下肢の運動メカニズムや、障害される組織の状態を詳しく解説され、大変内容の濃い講演でした。



このあと鍼灸師会会員の親睦を深める懇親会が行われ、学術の研修あり、楽しい懇親会ありの充実した一日となりました。