福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
6月29日(日)は、郡山市で開催された他職種合同勉強会に参加してきた。
その様子を書いてみたいと思う。
様々な医療関連の職種で『治療すること、治すこと』で悩み、壁に突き当たることは良くあること。
多くは、たとえば鍼灸師ならば親しい先輩の先生に教えを頂いたり、または独学で成書を漁ったりして道しるべを見つけることだろう。
この勉強会は、そういった治す事への一途な思いをもった、理学療法士、医師、柔道整復師、鍼灸師などの臨床家や、鍼灸学校の学生諸氏が参加され、大変盛り上がりのある勉強会となった。
<演題>
・東洋医学と西洋医学の類似点 〜経絡とANATOMY TRAINS〜
星総合病院 理学療法士 福島医療専門学校鍼灸科2年 千葉道哉氏
この勉強会の世話役でもある、千葉先生の講演。
経絡とは経穴(ツボ)と経穴を結ぶ連絡路であり、鍼灸医学の礎となる概念である。
概念と言うのも、実は神経とは異なり、この連絡路の存在が解剖学的には証明されておらず、経絡によって起こされたとする現象でしか理解されていないからである。
これまで科学的に経絡の存在を証明する試みが様々な研究機関で行われてきたが、いまだに完全に解明されてはいない。
千葉先生の演題では、近年提唱されてきたANATOMY TRAINSと経絡の相似点を紹介した。
経絡は気を運ぶ連絡路で、ANATOMY TRAINSはむしろ体の運動の際の支えやねじれなどに関わる構造的なもののような印象を受けた。
(ATOMY TRAINSの理論では、ANATOMY TRAINSを構成する筋膜などに緊張などが伝達されて姿勢の制御や安定をさせている、とのことだ)
経絡という概念は数千年も前からあったものの、このANATOMY TRAINSはここ数年くらい前から提唱されたものであり、今後の研究が注目される。
・下肢の慢性疾患と歩行の関係
星総合病院 理学療法士、鍼灸師 鈴木弘幸氏
バイオメカニクス、身体のアライメント、関節へのストレスといったキーワードで表現された下肢運動器障害の発生メカニズムの一考察、、と思われるご講演。
鍼灸や東洋医学がどちらかといえば形而上的であるのに対し、私の個人的な感覚で言えば、理学療法士の先生方の理論はやはり物質・形態があっての病変や障害の発生を主眼にしていると感じる。
鍼灸師の自分としては、こうした人体の構造医学に関する話を聞くことは大変興味深かった。
・環境適応??
桝病院 理学療法士 渡邉敦史氏
施術、治療行為をしている事については、この勉強会の参加者に共通の行為・職業である(学生についても目指すものは治療者であるから同じだと考える)。
医療機関に勤務が必須となる理学療法士においては、常に医師の指揮下にあるわけだと思うが、渡邉先生の講演を拝聴していると、チーム医療の一歯車を越えて、患者の人格やその生活環境などを常に気遣い、細やかな医療を提供していることを感じる。
以上、3題は理学療法士の資格を持って活躍する先生の講演であり、鍼灸師の自分としてはまだまだの不勉強を感じる。
<特別講演>
どのような考えに基づき患者さんをみるか
一寸法師ハリ治療院 中沢良平氏
実は中沢先生は、鍼灸師でもあるし柔道整復師免許も持っている。国語の教員免許もある。
この日は朝からテンションが高く『今日来ない人は不幸だな(笑) 今日はいい話できるんだけどね・・・』と笑っていた。
鍼灸はなぜ効果があるのか、先生の持論でもある自律神経反射をもとに、筋肉への効果、内臓への効果(交感神経緊張=副交感神経抑制による効果、またその逆も)、末梢、および全身の血行改善、様々なホルモンの改善(不妊患者のBBTを見ながら、E2やP4で解説)、またアレルギー疾患をとりあげ、リンパ球の異常活性の抑制などから、免疫の調整や活性を説明した。
古代中国医学ではもちろん自律神経などとは発見されておらず、こういった効果『気』の作用として捉えられていたはずである。
今後、科学が進歩すればこうした気・経絡の解明はされていくはずだ、とは先生の結びの言葉。
一番最初の千葉先生と最後の中沢先生の話は関連があって、大変良い話だった。
いつも思うのだが、中沢先生は『企業秘密』を持たない先生である。この日も秘技(笑)の実技を交えて気の存在、調整について会場の皆さんと楽しんでおられた。
中沢先生のブログもぜひご参照されたい。
ブログ・『水の旅人』
http://samurai-kid.at.webry.info/200806/article_6.html
こうした他職種の先生方が集まり勉強する場は、ぜひ今後も引き続き開催して欲しいと思う。
すべては患者のためである、とは共通のテーマだろう。