No.510の記事

『不妊治療はつらくない』 加藤レディスクリニック院長 加藤修先生著を読んで

不妊治療でいらっしゃる女性から、表題の本を頂きました。

『先生、良かったらお読みになりませんか?』と、遠慮がちに手渡された本は、薬を極力使わない、初診時でも条件さえそろえば採卵し体外受精を行うという東京・新宿の加藤レディスクリニック院長である加藤修先生の書かれたものです。



『不妊治療はつらくない』
加藤レディスクリニック院長
加藤 修著
主婦の友刊 1600円
ISBN978-4-07-233307-5

もうすでにお読みになられましたか?と聞かれ、実は3年くらい前に読んだことがある事を告げました。
ただ、電車の中に置き忘れたか、人に貸してそのままになってしまったか、手元から離れてしまっていました。

日鍼会の青年部長である愛知の近藤先生が、ぼそっと独り言のように『加藤先生の考え方は目から鱗が落ちるようだ』とつぶやき、あぁ、あの本を読んだな、と思ったものでした。

この本では、今全国で普通に行われているタイミングから始まる不妊治療が、たとえば薬剤による卵巣刺激から人工授精、体外受精とより高度な治療にステップアップする事について、大変批判的な内容が書かれています。

多くの(女性)不妊の原因は卵管のピックアップ障害が原因であって、『卵子と精子が出会えないことが多くの不妊の原因である』と述べられ、卵巣を刺激して卵胞を得ることや、ましてそれを延々と数周期も行うことは健全な卵胞の発育を妨げてしまう、それなら最初から(あまり薬剤などで刺激していない自然な状態の卵巣で)人工的に卵子と精子を出会わせればいいじゃないか、というのが加藤先生の自然周期採卵法による体外受精です。

一般的には体外受精は様々な治療を試して、最終的に行き着く終着の治療法のように思われています。

絶対的な体外受精の適応は、両側の卵管が閉塞などを起こしている場合や子宮外妊娠などで卵管そのものを摘出している場合、精子に対する抗体がある場合。また夫側で精子の運動がない場合や極端に少ない場合などです。

しかしそういったはっきりした原因がない場合でも、実際には原因不明な不妊として体外受精が行われるケースが多くあり、またその結果子宝に恵まれた方も少なくありません。

私は不勉強なのでこの本に書かれているようにステップアップ式の治療を批判できるものでもありませんし、やはり体外受精については多くの患者さんと同じように、すぐに実施するには抵抗を感じます。

ただこの本に書かれている様々なホルモン治療の功罪は不妊に悩む方だけでなく、われわれ治療側としても大変勉強になると思われます。

功罪、ですから悪いことばかり書いているわけではありません。
優れた効果についても、また副作用や長期に渡って使われた場合の影響について、大変参考になることが書かれています。

患者さんにも、またわれわれ鍼灸師などもぜひ一読をおすすめいたします。

(次回の書評は、おそらく日本の不妊治療のスタンダードと思われる堤治先生の著書、『生殖医療のすべて』を予定しています。割合古い出版ですが、大変勉強になる本だと思います)