No.639の記事

授かること、について

子宝は天からの授かり物、とは良く聞く言葉です。

不妊に悩んでいらっしゃる方は、『まさか自分たち夫婦が不妊になるとは思わなかった・・・』『子供が欲しいと思えば、すぐできるものだと思っていた・・・』と思われている事でしょう。

病院でも鍼灸などでも、治療は先が見えないながいものになることが多く、当院でも数年にわたって通院されているかたが多くいらっしゃいます。

不妊歴が短く(不妊よりは未妊と言った方がいいかもしれません)、病院へ行かず最初から鍼灸をはじめた方・・・、病院での治療と並行して鍼灸を行っている方・・・、病院での治療を一時的にお休みして、その間に妊娠に適した体づくりを目指す方、など、患者さんの事情によって実に様々なケースがあります。

鍼灸は地味な治療ですが、『体づくり』に関しては確実な効果があるようです。
毎月、不妊症の方のカルテを点検し、患者さんがお持ちになった基礎体温表と合わせて検証しますが、ほぼすべての方で冷えや周期に関係して現れる不快な症状は改善していますし、基礎体温の改善もほぼすべての患者さんについて得られています。

効果があるけど確実に自然妊娠に至るかどうか、またそれは別な問題になります。
体の状態が改善し、タイミングを見計らって努力されても一向に良い結果が得られない事が大変多いのです。

そのようなケースでは、専門医の治療と同時進行で鍼灸を行っていない場合に限り、患者さんと相談の上専門医へ紹介し、治療を並行して行う事にしています。

幸い、当院のような零細な鍼灸院からの紹介でも良く対処してくださる専門医の先生が数名いらっしゃいます。

何が効いても、最後に挙児を得られることが大切なのだと思います。別に鍼灸単独での成功にこだわるものではありません。

子宝を望まれる方に毎日接していると、医療や治療のほかに強く感じることがあります。
あまり治療やタイミングを意識して、夫婦のあり方が悪い方に向かってはいないか?と感じることが良くあります。

特に体外受精を反復して受けられている方に接している感じます。

体外受精は現在究極の不妊治療であるといえますが、夫婦の存在の目的が『挙児を得る』事に、無意識のうちに移っていないか、と感じるのです。

女性は子供を産む機械・・・とか言って非常識を問われた政治家がいましたが、患者さん本人が無意識にそう思っているフシが伺われるのです。

たとえ体外受精しか妊娠の可能性が見いだせなくても、もっと自然に夫婦のありかたを持つべきだと思います。

治療をしている身でこう言うのも変ですが、現在子宝に恵まれなくても、夫婦は夫婦であって、完全さは子を持つ夫婦となんら変わりはないのです。

お互い、相手の子が欲しくて結婚したケースはないでしょう。お互い惹かれ合って、離れず一緒にいたいからこそ結婚したと思うのです。


まれに体外受精の胚移植の前に自然妊娠される例や(採卵した周期ではなく、移植する周期に)、不妊治療を一休みして、次の治療に備えるために鍼灸を行っている方などに自然妊娠される方がいます。

夫婦間の性交渉を生殖として割り切っておらず、ごく普通に生活されていると、こんな事も起こるのでしょう。

あまり排卵日を狙ったように意識せず(少しは意識しないとダメですけど)、むしろご主人なら、そのあたりの日にケーキでも買って帰るとか、奥さんなら、ご主人の好物のお総菜でも一品そえるとか、そんな風にして相手を思いやってはいかがでしょうか。


今月(7月)は、とても難しいケースでの自然妊娠例が2例ありました。詳しくは書けませんが、来年になって無事出産されましたら、患者さんから許可を頂いて学会で報告したいと思っています。