No.698の記事

基礎体温は最重要か?

青森で講演した際、幾人かの妊娠された方の症例を紹介させていただきました。

講演に先立って、妊娠された方のカルテ、途中で脱落された方のカルテなどをまとめていましたら、意外と模範的な基礎体温の推移を表す方に妊娠例が少ないことに気がつきました。

もともと寝起きの体温を測る、というものですから、その時々によって誤差もあるでしょう。
しかしながら、基礎体温表に患者さんが書き込まれる『そのときの体調』が大変参考になります。

・腹痛、腰痛・・・
・おりもの、、、糸を引く感じ、、、
・出血、、黒っぽい、、少量、、、固まりが混じる、、など。

意外と当てにならないのが基礎体温ですが、患者さんの書かれたコメントは診療上大きなヒントを与えてくれるときがあります。

講演で紹介させていただいた症例で、基礎体温が改善する前に妊娠された症例を2つの記事に分けて2症例書かせていただきます。



この方は厳密に言えば不妊症ではありません。
結婚後、もとより不順であった月経の改善のために治療におみえになった方でした。

『私はきっと不妊になるのだろう』と心配されて来院されました。



結婚してすぐに記録された基礎体温では、しっかりした黄体期が認められます。しかし患者さんによれば、ちゃんとした(色や量の)月経は年に数回あるくらいだと話されていました。

通常、不妊治療では、明らかな原因があるかどうかご主人も含め専門の医療機関で調べていただいています。

この症例の場合は、月経期間が異常に長く、途中に無排卵とそれによる消退出血と思われる不正出血がありました。

ほか、体調などに不自然なところはないので、まず三ヶ月間の鍼灸治療を行い、月経の周期や生理の状態に改善がない場合は専門医の診察を含め、今後の治療を検討することにして当院での治療を開始しました。

(この患者さんの場合は、年齢が20代前半であったことと、『黒っぽい少量の月経血』は生理不順とあわせてすでに昔からあった症状であったため、私は三ヶ月を限度に経過観察をしようと思いました。逆に割合最近始まった症状であって憎悪傾向があればまず子宮ガンを疑うべき症例です)



いかがでしょうか?
異常に長い黄体期と、時に10日にも及ぶ不正出血・・・。
しかし治療を行うと次第に体温の降下が現れ、頸管粘液と思われる帯下も現れるようになりました。

そして治療10回、治療期間78日目で妊娠されます。



前の記事まででは、2年半とか、3年以上にも及ぶ通院によって妊娠された方を紹介しましたが、このように短い期間で妊娠される方もいるのです。

この方は不妊ではない方で、したがって短い期間で妊娠されたことも決して不思議なことではありません。
しかしこのように、基礎体温がきれいでなくとも妊娠出来ることがお分かりいただけたでしょうか?

余談ながら、この患者さんはご自身の月経不順から将来的に不妊になるのでは?と心配されて来院された方でした。

いろいろお話を伺っていると、不妊症になってしまったら『ご主人に申し訳ない』という気持ちが感じられました。とても思いやりのある優しい方だったのでしょう。

ご主人の転勤で遠くに行かれましたが、奥様のご実家は白河です。無事お生まれになり赤ちゃんを連れて来られたらうれしい限りです。

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次回は不妊歴4年で月経痛が特にひどかった方で、同じく短い期間(治療期間66日)で妊娠された、しかも基礎体温が改善する前に・・・。といった症例をご紹介いたします。