福島県白河市の鍼灸院、日常の鍼灸治療の診療日記や、学会参加記、趣味の日記
基礎体温の改善は大切ですが、綺麗に改善していなくとも妊娠された症例について、青森の講演に使ったスライドからもう一例紹介いたします。
症例は27歳女性で、不妊歴は4年。通水検査で左の卵管が閉塞。右の卵管も通りが少々悪い、といったものです。
専門医で排卵誘発を行いながら、タイミング療法を行っていました。
職業は介護職で、不規則な勤務や職務上のストレスからか月経はほぼ正常の約28日周期ながら、基礎体温上に不安定(特に黄体期不安定)が見られました。
また月経初日〜3日目までは強い腹痛と腰痛のため、ロキソニンやボルタレンと言った痛み止めを使っています。
H18年8月30日より治療を開始しました。
治療頻度は当院で基本的に行っている週1回の間隔でした。また自宅灸は三陰交へ隔日で行うよう指導しています。
ギザギザに上下していた基礎体温が、やや改善したように見られた7週後から症例の患者は来院されなくなりました。
その後、11月25日に来院されまして、数日前に産婦人科で妊娠していることを確認した、とのことでした。
私の経験では鍼灸治療で基礎体温が改善するのには通常、5〜8周期程度を要すると思っています。
卵胞の発育には、一次卵胞と呼ばれる原始卵胞から発育し排卵するまでが1年以上かかります。
鍼灸によって効果のある時期は、前胞状卵胞からの発育からで、排卵までの3〜4周期間です。
この期間に良好なホルモンの状態であれば、良好な排卵とそれに続く良好な黄体期(高温期)が出来ると考えています。
今日初めて行った鍼灸が劇的な効果を現しても、3〜4周期後の排卵から基礎体温が改善していく、と言うことです。(子宮内膜の反応性と言う問題も別にはありますが)
この様に、基礎体温が綺麗にならないと妊娠できないとか、あまり神経質にならない方が良いかと思います。
われわれ鍼灸師は、経過観察の決め手となるものが患者の体調の変化と、基礎体温くらいしかありません。
ついついこればかりを重視してしまいそうですが、患者さんにおかれましては、あまり神経質になることはかえって悪影響があるように思います。
(次回、、少々先になりますが、基礎体温が揃って妊娠された2症例で、2例とも難治な不妊だった症例を紹介いたします)
青森で講演した際、幾人かの妊娠された方の症例を紹介させていただきました。
講演に先立って、妊娠された方のカルテ、途中で脱落された方のカルテなどをまとめていましたら、意外と模範的な基礎体温の推移を表す方に妊娠例が少ないことに気がつきました。
もともと寝起きの体温を測る、というものですから、その時々によって誤差もあるでしょう。
しかしながら、基礎体温表に患者さんが書き込まれる『そのときの体調』が大変参考になります。
・腹痛、腰痛・・・
・おりもの、、、糸を引く感じ、、、
・出血、、黒っぽい、、少量、、、固まりが混じる、、など。
意外と当てにならないのが基礎体温ですが、患者さんの書かれたコメントは診療上大きなヒントを与えてくれるときがあります。
講演で紹介させていただいた症例で、基礎体温が改善する前に妊娠された症例を2つの記事に分けて2症例書かせていただきます。
この方は厳密に言えば不妊症ではありません。
結婚後、もとより不順であった月経の改善のために治療におみえになった方でした。
『私はきっと不妊になるのだろう』と心配されて来院されました。
結婚してすぐに記録された基礎体温では、しっかりした黄体期が認められます。しかし患者さんによれば、ちゃんとした(色や量の)月経は年に数回あるくらいだと話されていました。
通常、不妊治療では、明らかな原因があるかどうかご主人も含め専門の医療機関で調べていただいています。
この症例の場合は、月経期間が異常に長く、途中に無排卵とそれによる消退出血と思われる不正出血がありました。
ほか、体調などに不自然なところはないので、まず三ヶ月間の鍼灸治療を行い、月経の周期や生理の状態に改善がない場合は専門医の診察を含め、今後の治療を検討することにして当院での治療を開始しました。
(この患者さんの場合は、年齢が20代前半であったことと、『黒っぽい少量の月経血』は生理不順とあわせてすでに昔からあった症状であったため、私は三ヶ月を限度に経過観察をしようと思いました。逆に割合最近始まった症状であって憎悪傾向があればまず子宮ガンを疑うべき症例です)
いかがでしょうか?
異常に長い黄体期と、時に10日にも及ぶ不正出血・・・。
しかし治療を行うと次第に体温の降下が現れ、頸管粘液と思われる帯下も現れるようになりました。
そして治療10回、治療期間78日目で妊娠されます。
前の記事まででは、2年半とか、3年以上にも及ぶ通院によって妊娠された方を紹介しましたが、このように短い期間で妊娠される方もいるのです。
この方は不妊ではない方で、したがって短い期間で妊娠されたことも決して不思議なことではありません。
しかしこのように、基礎体温がきれいでなくとも妊娠出来ることがお分かりいただけたでしょうか?
余談ながら、この患者さんはご自身の月経不順から将来的に不妊になるのでは?と心配されて来院された方でした。
いろいろお話を伺っていると、不妊症になってしまったら『ご主人に申し訳ない』という気持ちが感じられました。とても思いやりのある優しい方だったのでしょう。
ご主人の転勤で遠くに行かれましたが、奥様のご実家は白河です。無事お生まれになり赤ちゃんを連れて来られたらうれしい限りです。
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次回は不妊歴4年で月経痛が特にひどかった方で、同じく短い期間(治療期間66日)で妊娠された、しかも基礎体温が改善する前に・・・。といった症例をご紹介いたします。
先日の青森で講演した際に使用した問診票を修正し、修正版問診票としてダウンロードできるようにしました。
2ページ構成は変わりなく、ごく一部分だけ変更してあります。
これから不妊治療(女性)で当院に来院される方のみ、下記問診票をお持ち頂いた場合、初診料を無料とさせて頂きます。
(診療の精度を向上させ問診の大幅な省力化が期待できるため、初診料を無料とします。また口頭では質問しにくい・答えにくい項目が含まれていますので、出来るだけ詳細にご記入ください。)
↑クリックでワード版問診票がダウンロードできます。
また、当院受診の患者さんだけではなく、不妊治療を行っている同業者の先生方の参考になれば幸いです。よろしければご活用ください。