不妊症

男性不妊の行く末

1月18日・日曜日の夜9時からのNHKスペシャル『女と男、Y染色体が消える』をごらんになられた方も多いと思います。

番組のweb
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090118.html

一婦一夫制が長かったため、精子の競争力が弱まり、精子の総数や運動率・奇形率が高い男性が急増した、と番組で放映されました。

出産児の14人に1人は何らかの補助生殖治療(不妊治療)を受けているデンマークの成人男子の精子の状態と、日本のそれはほぼ状況が一緒で、成人男子の2割近くが男性不妊になっておかしくない精子数であるということでした。
またその予備軍を含めると、実に3割超の男性に異常があるとのことでした。

精子の競争力のない個体は本来自然から淘汰されるはずです。
生殖に結婚を伴う人間という生き物では一夫一婦制が当然となり、故に強者だけではなく弱者でも子孫を残せるようになったことが男性不妊の原因の一つと言うことでした。


これとは別の原因になりますが(こっちの方が主なテーマでしたが)、受精時にすでに男女の制を決定する性染色体で、Y染色体がだんだんと小さくなってきていて、およそ500万年後にはなくなるかも知れない,と言う問題について放映されました。

人間は46個の染色体を持っていて、常染色体が44個に、性染色体が2個となっています。
性染色体にはX染色体とY染色体があり、正常な卵子は常に22個の常染色体と1個のX染色体を持っています


また正常な精子は、22個の常染色体とXかYのどちらかの性染色体を1個持っています。受精時には合計して46の染色体を持つようになります。

母親(卵子)から、常染色体22+性染色体X1個
父親(精子)から、常染色体22+性染色体XまたはY1個
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               合計46個

性染色体がX+Xであれば女児が、X+Yであれば男児が誕生するのです。

染色体が次の世代の染色体をを作るときコピーミスが起こることがあります。

女児ができるX+Xの生殖であれば、コピーミスの起きた染色体は卵子のX、もしくは精子のX染色体で同士で壊れた部分を穴埋め出来るのだそうです。

問題はX+Yの男児が生まれるケースで、Y染色体の一部が欠損した状態で受精が行われると、欠損した一部を修復する事はないまま遺伝は継続されると言うものです。

欠損した部分はなくなってしまうので、だんだんと小さなY染色体となってしまい、その分小さくなっていくのでおよそ500万年でY染色体はなくなるだろう、と言うことでした。

Y染色体がなくなるとどうなるのか・・・
一言で言えば♂が生まれなくなる、ということですが、500万年という長い時間から考えれば、ヒトの生殖のあり方も現在とはずっと違うものになっているのではないかと思います。

今から心配するものではないと感じましたが、良くも悪くも人間とは進化(退化)の途中であることを実感しました。

ところで男性不妊ではテストステロンのほか、女性と同様にFSHやLH,プロラクチンなどのホルモンが関与してきます。
日常の疲れやストレスなどが精子の状態に反映しますので、鍼灸治療は良い効果があります。

高プロラクチン血症・潜在性高プロラクチン血症と鍼灸

正常な二層性の基礎体温になりにくい、生理までの期間が不規則になるなど不妊の原因に挙げられるものの一つとして高プロラクチン血症や潜在性高プロラクチン血症(隠れ高プロラクチン血症)などがあります。

このせいでカバサールやテルロンなどを産婦人科にて処方されている方も多いと思います。

これらの薬はドーパミンの働き不足から起こるパーキンソン病の薬として開発されたものです。
ドーパミンはプロラクチンに対して抑制作用があり、ドーパミンの働きを助けることによってプロラクチン値が下がるのです。

ところで、鍼灸治療はドーパミンの働きに影響があると、2006年11月20,21日に京都で行われた『国際シンポジウム“エビデンスに基づく鍼灸治療の現状”』で、スェーデンのT.Lundeberg博士が講演しています。

・膝痛に対する鍼の効果の一部はおそらく報酬系の賦活による/T.Lundeberg(Sweden)

(当時の矢野全日本鍼灸学会会長の座長報告)

心地よい刺激、デリケートな日本の鍼灸は、こういった効果が期待出来る、と言う内容です。

ドーパミンに対して効果が期待出来るのであれば、当然プロラクチンにも良い影響があるでしょう。

当院の患者さんでプロラクチンに異常があった方を診させて頂くと、あるパターンを、見つけられます。

・胸骨中央の経穴(膻中)に圧痛が現れる。
・背中の中央にある経穴(身柱)に圧痛が現れる。
・特に注目するのは頭皮の浮腫で、あたかもカツラを被っているかのように頭皮が動き、浮腫がよく分かる方が非常に多い。

この三点から高プロラクチン血症や潜在性プロラクチン血症に効果のある治療穴が自ずと決まるわけですが、良い効果があるようです。

話は変わりますが、よく患者さんに『世界で一番鍼灸治療が進んでいるのはやっぱり中国ですか?』と訊かれることがありますが、私は日本の鍼灸治療が一番ではないかと考えています。

鍼灸もグローバルな代替医療として世界に広まっていて、世界規模での学会も数多く開かれています。
そのなかで、国際シンポジウムは第一回が京都で開催際されていますし、第二回国際シンポジウムは今年6月に大宮で開催されます。私も参加したいと思っています。

なお
http://jsam.jp/jsam_domain/18/2006_kyoto/index2.html
このページは学会広報部の仕事として、私がお作りいたしました。


 

卵管の働きと不妊症(2)

卵子と精子が出会えないピックアップ障害については、

1)おそらく鍼灸治療では効果のあまり期待出来ない卵管と周辺臓器や腹膜との癒着。
(高度な癒着があれば、鍼灸ではどうにもなりません)

細かく言えば、たび重なる子宮内膜症によって炎症を繰り返し、卵子を取り込むべき卵管の先(卵管采)が変形していて卵子を取り込みにくくなっている、などと言うのもあるようです。

2)お腹の固い方にみられる腹部瘀血により、腹膜内の圧力などが起こり卵管が機能しにくい。
お腹が固い方には、卵巣周囲が固く押して痛みを訴える場合もあるし、子宮周辺が固く、やはり押して痛みを訴える方も多くいらっしゃいます。
また腹部全体が固くて、どこを押しても痛みを訴える方もいます。
(これは鍼灸治療によって効果を期待出来ると思います)

卵管の働きには、ピックアップした卵子を子宮まで輸送する機能や、輸送の途中で精子と出会わせ、受精後はゆるやかに培養しながら受精卵を輸送するという働きもあります。

卵管の卵子の輸送は、卵巣→子宮と一方的ではなく、時期によっては卵管に戻ったり子宮に出たりと移動を繰り返しているようです。卵管に戻るタイミングも子宮に出るタイミングもホルモンの状態が関係するという事ですが、これは加藤レディスクリニック院長の子宮回帰説です。このようにヒトの妊娠は卵管による培養機能が大きく関係しているようです。
ヒトに子宮外妊娠が多いのはそういった原因なのかと思ったりもします。

卵管の閉塞があって、卵管水腫がある方の場合、体外受精による胚移植を行っても成功率は高くないそうで、これは水腫の内容の卵管液が高いPHを持っているからだと言われています。

卵管は粘膜、筋層、漿膜の3層からできており、筋層と粘膜はほかの臓器と同様に自律神経の支配を受けているだろうと思います。
胃粘膜は精神的緊張などによる交感神経亢進で薄くなり、薄くなった粘膜は胃を保護出来ずに胃酸による刺激を受けて潰瘍になることはよく知られています。

胃の運動も自律神経に関係が深く、特定のツボにハリを打つと、胃下垂などで動きにくかった胃が動いたりと、興味深い効果が報告されています。
これは胃の働きを調節している自律神経の働きがハリによって改善されたから、と考えられています。
胃壁の筋肉にある血管の血行も改善し、胃粘膜を十分に分泌する働きもあります。

胃と同様に、また卵管も鍼灸によって動きやすい状態になるのではないかと考えます。また卵管への血行が改善することによって良い卵管液が分泌するのではないかと考えます。

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以上の内容については非常に独善的であって、医学的根拠には乏しいものです。
間違っても引用したりしないようにお願い致します。
当院は実験的な施設も環境もなく、患者さんや動物を使った生体実験は行っておりませんし、日々日常の診療中に思いついたこと、疑問に思ったことを書き連ねているに過ぎません。

上記記事の内容については、

『不妊治療はつらくない』
加藤レディスクリニック院長
加藤 修著
主婦の友刊 1600円
ISBN978-4-07-233307-5

以上の書籍を参考にさせて頂きました。